創業115年を迎える西脇市にある産元商社・株式会社丸萬は、2015年7月にオリジナルブランド「POLS(ポルス)」を発表。テキスタイルデザイナー・梶原加奈子率いるKAJIHARA DESIGN STUDIOとともに、西脇で開発・製造した「Made in Japan」のテキスタイルブランドだ。
「Made in Japan」の価値が見直されつつあるいま、「産地」という言葉もよく見かけるようになった。「産地」にはそれぞれ独自の風土、気候、文化、歴史がある。その独自性なしには、「産地」として育つこともなかった。
「POLS」の生まれる産地・播州とはどういうところなのか? 「POLS」のテキスタイルが生まれる道筋をたどってみよう。
播州織産地の中心ともいえる西脇は、兵庫県は神戸市の北50キロ。東経135度線、北緯35度線が交差した日本列島の中心点に位置し、「日本のへそ」とも呼ばれる場所にある。
西脇市は四方を山で囲まれ、西に流れる杉原川が東に流れる加古川と、ちょうどY字路のように合流する。そこが繁華街。
これら川の豊かな水が、この地域一帯に豊富な産業を勃興させてきた。播州織もその一つである。
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山に囲まれた西脇市のジオラマ。川の流れに沿って、市そのものが「Y字路」のよう。
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加古川が流れる。この豊かな水があったことで、テキスタイルづくりが栄えた。
欠かせない川の水
中国山地の東南端、播州平野が始まろうとする地に広がる北播磨地域には、いくつもの谷筋の水が川となって集まり、加古川の大きな流れに合流している。それらの支流は軟度の高い水質を有し、これが染色業を発達させる要因の一つになった。
明治から昭和の初期の頃には、漂白や染色した糸を河原で水洗いしていたという。
村徳染工株式会社では、いまもこの川の水を引き、糸を染めている。その量は、河川水と伏流水を合わせて約2千トン。使用した水は瀬戸内法(※瀬戸内海環境保全特別措置法)の基準を満たすよう処理し、また川に還す。
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工場内はとても暑い。奥に見えるのが糸を巻いた「チーズ」。これを中央の大釜に入れ、染色液に漬けて染める。

実際に染めるときはこの砂のような染料を混ぜて色を作る。染料は石油が原料という。この工場では、これが溶けた使用済みの染液の一部(およそ1/5)を肥料にリサイクルしている。
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機械で測りきれない1/10g以下の染料は、職人が手で最終調整。薄い色ほど難しい。
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昔はこの染工場には約170人が働いていたという。いまは30人。
織り上がった生地が実際に使えるよう最終調整を行う「整理加工」の工程でも水は欠かせない。
整理加工の播州織工業共同組合では、一日1,000トンを使用する。工場長の松田博仁さんは、「水がなくなったら大変なんですよ、井戸には水量を知らせる信号があるんです」と話す。少なくなってきたら黄色、赤色と変わり、水量を知らせるのだ。
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長いラインの中を、生地は流される。その間に、洗ったり溶剤に浸けたり、少しだけ表面を焼いたり。
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何度も液剤に浸したり洗ったり。そうして、消臭加工や防風加工、UV加工や起毛加工など、生地に付加価値を与えていく。
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火花が散っているのが見える。
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