日本でも近年、『ファッションには一家言あるぞ』という洒落者のあいだで人気を集めつつある「A Kind of Guise」。
評価されているのは、生産の全てをドイツで行うものづくり。
2009年の設立以降、その姿勢が同じドイツ製品に対して誇りを持っているテイラー、工場のあいだに瞬く間に知れ渡りました。
ちょうどベルリンのショップをオープンした「A Kind of Guise」。そのものづくりについて、設立者の一人・Maximilian Combüchenに尋ねました。
―― 「A Kind of Guise(ア・カインド・オブ・ガイズ)」が生まれたいきさつは?
「A Kind of Guise」は2009年、大学でのプロジェクトとして始まった。共同設立者でクリエイティブ・ディレクターのYasar Cevikerが、ドイツの古いトレーニング用ボールを作っていた廃工場から、レザーの在庫を見つけてきた。これを使って、Yasarがバッグやバックパックの限定コレクションを製作したんだ。
それが反応良くて、ブランドとしてアクセサリーのみならずレディース、メンズのアパレル製品を展開するようになったんだ。まだまだ小さいブランドだけど、少しずつ成長している手応えはあって、今年の秋は「Adidas(アディダス)」とコラボ商品を販売する。
―― 生産の全てをドイツで行うこだわりを持ったものづくりが特徴だが、ドイツにこだわる理由は?
ブランド全体としてのコンセプトは、あるようでないのかもしれない。それぞれのメンバーが心から好きなことをやっているだけなんだ。その全員のインスピレーションやパッション、興味関心が合わさったものが「A Kind of Guise」というブランドだ。
小さなチームだからこそ、互いのことをよく知ることができる。まるで家族のようにね。そのつながりが、ブランドのアイデンティティになっていると思うんだ。
全部のアイテムが、100%一貫してドイツで生産されている。多くの人が、その点について僕らを「フェアトレード」の会社だと理解しているようだ。途上国でコストを買い叩くようなものづくりを恣意的に避けているんだと。
確かに、そういったものづくりは良くない。ただ、僕らがやっているのは「Act Locally(地域に根ざして行動する)」という意味合いのほうが強いかな。
例えば僕の祖父母は、1970年代まで、北ドイツで小さな縫製工場を経営していた。20人の工員がいて、地域のレディースブランドのためにドレスやジャケットを縫っていた。だけどグローバル化で採算が合わなくなって、だいぶ前に閉鎖してしまった。
その傾向はいまも続いているね。チープなものづくりが歴史あるものづくりのインフラを壊している。
まだ少し工場は残っているけど、僕らはここ5年、常に新しい工場を探している。高齢化で職人がつぎつぎリタイアしていて、閉鎖を決めてしまうからだ。
これは非常に残念で、何かしたいと思ったんだ。
―― 強みのあるアイテムは?
毎シーズン、トップ人気が違うから難しいな。でもバックパックは年間とおして人気かな。ときどき、4年前に作ったバックパックはまだあるか? と尋ねてくるお客さんもいるくらいだよ。
―― 最近、ミュンヘンに続いてベルリンにショップをオープンした。
どちらの街にも、僕らのメンバーが住んでいるから、「A Kind of Guise」としてすでにアテンションは集まっていた。そしてどちらの街も、旅行者がとても多い。より大きな層にリーチしていくうえで、合理的な判断だと思っている。
―― シャツとパンツは、生地がとてもユニークだ。ドイツで一貫生産する難しさは?
生地は、僕らの重要なフィロソフィーの一つだ。おいしい料理を作りたいなら、おいしい材料を集めないと始まらないだろう?
ドイツはもちろん、イタリア、スイス、オーストリア、イギリス、そして日本から、上質な生地だけを選定しているよ。どの生地も、見た目や機能においてユニークなキャラクターを持っている。例えば、数シーズン前に、ドイツのテディベア企業「Steiff」とコラボして、彼らが高級ラインのぬいぐるみに使うニット・ファーを供給してもらった。
ボタンやジップなどの副資材にもこだわっている。ボタンなら、マザー・オブ・パール、動物の角で作られたホーンボタン。レインコートにはハイテク防水繊維、YKKの高級ラインのジップ……そのほか、なんでも。
3年前には、イタリアの湖の縁で90日間野ざらしにしたデニムの生地で100枚限定のシャツを作った。彼らのものづくりの姿勢がよく分かるコレクション。
―― 次の予定は?
早くブランドを成長させたいとは思っていない。「A Kind of Guise」は、ビッグメゾンになるブランドじゃないんだ。小さなレーベルとして、メインストリームから一歩外れたところで、自分たちの道を進むことが求められていると思っている。僕らも、目の前のシーズンに集中する毎日だ。世界を席巻してやろうということより、より良い商品を作ることに注力していきたいね。
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