【2015年2月8日Rumani Saikia Phukan(マップス・オブ・インディア)】
インドでは憲法や法律によって禁止されているにも関わらず、未だに児童労働が広く蔓延しています。児童労働がこの国のGDPを支えているのは紛れもない事実です。驚きましたか?その事実に私も衝撃を受けました。私は、児童就労が盛んに行われていることは知っていましたが、GDPに貢献するほどだという事実には気づいていませんでした。
インドの主要産業はカーペット製造、絹産業、爆竹製造、飲食店、ダイヤモンド産業ですが、これらの産業で児童労働が盛んであることが理由です。その現状は、ダイヤモンド産業において顕著です。
なぜ、ダイヤモンド産業における労働力として児童が好まれるか
ダイヤモンドをカットし研磨する作業には、完璧な正確さが求められます。そして、この技術はたいてい労働者の家族によって代々受け継がれていくか、現場での実地訓練により親方から徒弟へと引き継がれていきます。
ダイヤモンドの品質の判断基準となる4Cのうち、3C(色・透明度・重量)は自然界によって決められます。一方、残りのCであるカットについては、加工技術によって左右されます。
ダイヤモンドの美しさと価格を測る判断材料として、主にこのカットというプロセスが重視されると考えられています。良品とそうでないものを見分ける際のポイントとなる、ダイヤモンドの最終的な形状を決めるカット・研磨というプロセスは、労働者の鋭敏な視力と巧みな技術にかかっているのです。
この点が、大人より子供が適しているとされる所以です。
子供は鋭敏な視力を持ち、手さばきが安定しています。彼らは、大人よりも早く正確にダイヤモンドをカットすることが出来るのです。ダイヤモンド産業が他産業と比較し児童労働に大きく依存している理由の一つは、そこにあります。今日、ダイヤモンドのカットについてはインドがほぼ独占しており、世界の90パーセントのダイヤモンドが同国において加工されています。
この産業が儲かる理由は、低賃金で容易に調達できる労働力にあります。
貧しい家族が田舎から都市へ出て行くのに、この仕事は魅力的でした。この産業が成長してきた背景には、貧困家庭がそのような目的を果たすために、この労働市場に組み込まれていったことが挙げられるでしょう。
ダイヤモンド産業における労働環境
インドは世界最大の宝石カットセンターです。そのうちダイヤモンドも一つの重要な輸出品目であり、宝石・宝飾品の輸出のうち約80パーセントを占めます。
この産業が急成長した主な理由としては、容易に調達できる安価な労働力が挙げられます。ダイヤモンド産業は長時間の継続的な労働を伴うカット・研磨によって成り立つ産業であり、労働集約型産業です。
そして、その工場内は健康を害するような劣悪な環境と言われています。狭い室内に多数の労働者が詰め込まれ、換気は悪く、十分な明かりがついていません。混み入った室内にはダイヤモンド加工の過程で生じるちりやほこりが舞い、それが労働者の健康を損ねます。カット・研磨の作業の中で、就労する児童は身体の痛みに悩まされ指先に傷を負います。児童を含む多くの労働者が被る健康被害は、頭痛、眼精疲労、足や肩の痛み、虫歯、赤痢などです。
就労する子供の多くは10~14歳の少年で、労働時間は1日あたり7~9時間とされています。
ダイヤモンド産業の中心地
ダイヤモンドのカット・研磨の中心地は、インドのスーラト、ジャイプール、そして、ムンバイです。
そのうち、グジャラート州にあるスーラトは、この分野において世界の中心地とされています。ある報告書によれば、この地域のダイヤモンド工場で働く主に12~14歳の少年らは劣悪な環境の中で長時間の研磨作業を強いられています。
ジャイプールにおいては、この分野の労働に携わる子供は2つのカテゴリーに分けられます。
一つ目のカテゴリーに分類されるのは、肉体労働に従事する貧困家庭の6~10歳の児童で、朝の8時から夜の6時まで働きます。彼らは読み書きができません。 もう一つのカテゴリーに分類されるのは、10~14歳の少年で、ある程度の安定した収入のある家庭に属しています。彼らは学校に通学しており、放課後に5時間程度働きます。
この仕事は、より良い仕事を求めて都市に出て来る貧困家庭出身の労働者で占められています。
ダイヤモンド工場を営む経営者は、ダイヤモンドの原石を流通業者から受け取り業務を歩合制で受託しますが、一方、そこで働く労働者に支払われるのは、低賃金の固定給です。大規模な工場で加工されることもありますが、ほんの一部とされています。
法的枠組みとNGOによる活動
インド憲法24条では、14歳以下の子供による工場・鉱山・その他における危険を伴う労働が禁じられています。また、21条では全ての州に対し6~14歳の子供への義務教育を定めています。
1986年に児童労働法が制定されたことにより14歳以下の子供による危険を伴う就労が禁じられ、翌年1987年には児童労働への高い依存に対処する措置として児童労働に係る国の政策が発表されました。
そして1991年、国際労働機関(ILO)は世界中の児童労働撤廃に向け児童労働撤廃国際計画(IPEC)を立ち上げましたが、インドは世界で最初にこの覚書に署名をした国です。
また、インドには1948年に制定された工場法、1952年に制定された鉱山法、2000年の子供のケアと保護を目的に制定された少年法、2009年の無償義務教育法に関する子どもの権利法があります。これらは全て、子供たちの権利を守るために定められた法律です。
さらに、インドにおいて多くのNGOが児童労働撤廃に向けて努力してきました。
インド人のノーベル賞受賞者カイラシュ・サティーアーティは1980年、全ての子供を搾取から救い出し無償で質の高い教育を受けられるようにすることを目的に、バチパンバチャオアンドーラン(子ども時代を救う運動:BBA)を立ち上げました。このNGOは82,000人以上の子供を救済し労働者同士を繋ぎました。
その他にもインドには、CRYインディア、セーブ・ザ・チャイルドフッド財団、セーブ・ザ・チルドレンなど、子供の教育を受ける権利や児童労働の削減についての啓蒙活動をしているNGOが多数存在します。
要約すると、依然としてインドは、法や規制が制定されているにも関わらず、ダイヤモンド産業において大規模な児童労働の温床となっています。その多くの労働者がインド工場法によって守られておらず、児童労働法についてもほとんど機能していないのが現状です。
ダイヤモンド産業では6歳程の児童までもがカットなどの危険な労働に従事しているとされており、インド政府により危険な労働を伴う産業としてリストアップされています。
このような労働に携わる多くの児童らは、借金返済に追われていることが分かっていますが、児童労働はいかなる形態・いかなる産業であっても犯罪行為に当たり、完全撤廃されるべきです。とはいえ、それは一夜のうちに実現できるようなものではありません。
児童労働の主要な一つの要因として挙げられるのが、貧困です。多くの親たちは、児童労働の廃止を支持しません。家計を助けるために、家族自身が自分の子供を就労させるからです。
そのような現状を鑑み、貧困削減のために充てられる多額の資金がそれを本当に必要としている人々へ渡るよう、今こそ、政府がより厳しい措置をとることが求められています。ダイヤモンド産業において児童就労を余儀なくされている家族らは貧困削減プログラムによる手当を当然受け取るべきであり、そのための効果的な措置がとられるべきなのです。
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