【レポート】グリーンなベルリンファッションウィーク

2015. 8. 12

市内各地でファッションショーや展示会などが行われるベルリン・ファッションウィーク。その各所を結ぶシャトルバスの運行ルートに、2015年7月からある展示会が加わった。それは「Ethical Fashion Show Berlin(エシカルファッションショー・ベルリン;以下、EFSB)」。ルート中の展示会の入場券が一つでもあれば、それを使って他の展示会も見て回ることができる。エシカルでサステナブルなファッションが、「正式に」ファッションウィークの仲間入りをしたことを象徴するようなニュースだ。

いま、世界中のエシカルブランドたちは、ベルリンに熱い視線を送っている。「ベルリン(への展示会出展)はいちばん売上が立つから外せない」「サステナビリティへの理解が高いバイヤーが多い」と、口を揃える。サステナビリティの中心は、ベルリンになるかもしれない。その実態を追った。

Ethical Fashion Show Berlinとは?

エシカルなファッションを紹介する大型展示会である「EFJB」。今回で10回目を数え、エシカルなハイファッション展示会「Greenshowroom(グリーンショールーム)」と併催される。今年はドイツのほか21カ国から約160社が集まった。

Courtesy of Messe Frankfurt

Courtesy of Messe Frankfurt

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オーガニック/ナチュラル素材を使用するほか、ローカル性を推進するブランドも多い。フェアトレードはおおよそどのブランドも共通している。とりわけリサイクルに取り組むブランドが目立つのも特徴だ。来場者は約2,000人。バイヤーとエージェントが主で、7〜8割がドイツからだ。

運営するのは、世界最大級の見本市企業として、世界各国で年間約100本の見本市を開催しているメッセ・フランクフルト。

同社は、2010年に「パリ・エシカルファッションショー」を買収するも、数回の開催で中止している。しかしほぼ入れ違いに、すでにベルリンで有志2人により開催されていた「Greenshowroom」を買収。2011年7月から「EFSB」として開催を始めた。

当初から運営を担当するBernd Muller(ベルント・ミューラー)とStephanie Keukert(ステファニー・コイケル)は、場所を移した理由について、ドイツのほうがエシカル消費の市場規模が大きいと話す。その理由は、ドイツの独特な小売構造にあるという。

サステナビリティを進めていくうえで、重要なプレーヤーは個人経営のインディペンデントなショップ。そこにターゲットを定めている。ドイツはその数が圧倒的に多い。

フランスでは百貨店や大手小売チェーンが市場を握っており、個人経営のショップ市場が小さすぎる。ちなみに、エシカル先進国といわれるイギリスも、フランスほどではないが同じ傾向があり、デザイナーたちは自分で店を始めるか、大手企業と組むことが多い。(Muller)

なにより、ドイツのバイヤー・消費者のほうがサステナビリティへの関心が高い。フランスの消費者は、植民地だった国々を支えることには積極的だが、サステナビリティ全体ではまだまだ関心が低い。(Keukert)

「ベルリンは腰を据える価値がある市場規模」と言い、当面は他国展開はしない予定とも。

リサイクルに強みのあるワケ

リサイクルに取り組むブランドが目立つ背景にも、ドイツならではの背景がありそうだ。「エコ先進国」と呼ばれるドイツの人々。自然が好きで、ビオ(オーガニック)が定着しているのに加え、合理的でモノを最後まで使い倒す国民性が、リサイクルを促しているのかもしれない。

ベルリン市内・ミッテ地区にあるショップ「Upcycling Fashion Store(アップサイクリング・ファッション・ストア;以下、UFS)」。リサイクルに取り組むデザイナーたちが共同で立ち上げたネットワーク団体だ。ベルリン市内のショップやブランドショールームをマップにし、一般向けの情報発信のほか買い物ツアーなども開催している。

(Courtesy of Upcycling Fashion Store)

(Courtesy of Upcycling Fashion Store)

「Upcycling Fashion Store」の店内。ドイツのみならずさまざまなアップサイクルのブランド商品が並ぶ。

「Upcycling Fashion Store」の店内。ドイツのみならずさまざまなアップサイクルのブランド商品が並ぶ。(Courtesy of Upcycling Fashion Store)

「EFJB」に、このメンバーが協力している。現在「UFS」創設メンバーの一人であり、「EFSB」で出展ブランドをマネジメントするCarina Bischof(カリーナ・ビショフ)も、ベルリンでの盛り上がりを感じているという。

今回のアンケートを見る限り、出展者のうち半分は新規顧客・発注を獲得したようで、買い付けが盛んです。また、他の展示会との乗り入れも開始して、これまでエシカルに取り組んでない「一般の」来場者が大きく増えました。

残念な点として挙げるならば、市からはまだ支援がないこと。市の支援があれば、もっと盛り上がりを作れるでしょう。

それでも、「UFS」がマップしたベルリン市内のショップ・ショールームの数は30を越えるのは驚くべき多さではないだろうか。

アップサイクルに取り組むショップ、ブランドショールームのベルリン市内マップ(Courtesy of Upcycling Fashion Store)

アップサイクルに取り組むショップ、ブランドショールームのベルリン市内マップ(Courtesy of Upcycling Fashion Store)

職人ギルドの歴史的背景

さらに質を追求する職人ギルドの歴史が、職人的で丁寧なものづくりを後押ししていると、Carina Bischofは加える。

ドイツには中世・職業ギルドの歴史があるためか、質へのこだわりが強いです。「自分が納得するものができるまでブランドをやらない」という人が多いので、スタートアップは少ないですね。

フェアトレードで、途上国の伝統技術の職人たちとものづくりをする独ブランド「FOLKDAYS(フォルクデイズ)」は、地道なPRで急成長した。その創業者のLisa Jaspersも、歴史に根付く質へのこだわりを同国消費者の特徴に挙げる。

私たちはポップアップショップとオンラインショップで販売していますが、実物を見て買いたいという人が多いです。「職人」の伝統が後押ししているように感じます。もちろん、情報漏洩が怖いというのもありますが、ドイツの消費者はECにかなり慎重ですね。

なので私たちも、クラフトマンシップに重きを置いてPR活動をしていますし、ポップアップショップを大事にしています。

Inside Folkdays & Friends pop up shop held June 2015 (Photography: Ruth Bartlett)

Inside Folkdays & Friends pop up shop held June 2015 (Photography: Ruth Bartlett, Courtesy of FOLKDAYS)

自分の基準で価値を判断し、納得して買う。そのためだろうか、SNSの使用も他国に比較すると積極的ではないという(*)。

個人でSNSを頻繁に投稿する人は少ないですね。私個人もSNSはやりますが、完全にビジネス目的。ドイツ国外にアプローチするためですね。(Bischof)

次回は、実際いまドイツでどのようにファッションが消費されているかについて尋ねていく。


*……The German Guide to Social Media

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