繊維の女王とも呼ばれる「シルク」。光沢が美しく、滑らかな肌触りにうっとりしますよね。
そのシルクはご存知、蚕の繭からできています。さなぎの状態で茹でることで、糸を取ることができるようになりますが、その間に中の幼虫は死んでしまいます。
一方、幼虫が蝶になることができる方法でできたのが「ピースシルク」。蚕が羽化したあとの繭玉から紡いだ糸で作ります。
インドはシルクの名産地。ここに、蝶だけでなく女性も羽ばたかせる方法でシルクアイテムを作っているブランドがあります。
「cocccon(コクーン)」は、インド人デザイナー・Prakash Jhaによるブランド。ニューデリーのファッション大学を卒業後、長らく海外でデザイナーとしてのキャリアを積んできました。
10年近く経った後、母国のためになることをしたいと、ブランドを立ち上げました。彼が生まれ育った地・ジャールカンド州は、まだまだ貧困にあえぐ人々が多い地域。
多くの人は過酷な貧困の中に暮らしている。将来に絶望して、子どもたちがマオイストグループに入ってしまう。
と、Prakashさんは言います。
そこで目をつけたのが、ジャールカンド州の主要産業の一つ養蚕。そのシルクは世界的に有名です。
しかし、作り手の多くはその価値が分かっていません。無知につけ込まれ、仲買人に買い叩かれています。安い値段で買い取られているので、彼らは貧困のまま。作り手以外の人がシルクで儲けているのが現状です。
そこでこの状況を変えていこうとブランドを設立。女性たちにピースシルクの製法を教えて、雇用しています。
シルク産業ではまだまだピースシルクは少ないです。
幼虫たちが繭を作ったら、細心の注意を払って、繭に小さな穴を開けます。それを部屋の中で吊るしておき、2〜4週間孵化するのを待ちます。
蝶になって飛び立ったら、シルクにします。
それだけでなく、太陽エネルギーを使った紡績機などを導入し、環境にもやさしい工房運営に取り組んでいるとか。それらを使って、サテンやオーガンザといったシルク生地と製品を作っています。
自分たちが作ったものが正当に評価され、実際に賃金として手元に返ってくる。そのことが彼女たちに、明日への希望と大きな自信をもたらしているといいます。また少しずつジャールカンドに人が戻り、シルクづくりに取り組み始めているとも。
幼虫→さなぎ→成虫へと変化をとげる蝶は「変身」という意味を持つモチーフ。新しい道を開いていく姿に、女性たちの姿が重なります。
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