兵庫県西脇に1901年から続く先染織物の株式会社丸萬が、オリジナルブランド「POLS(ポルス)」を発表。テキスタイルデザイナー梶原加奈子率いるKAJIHARA DESIGN STUDIOと恊働し、ビビッドなカラーとパターンのテキスタイルアイテムを展開する。
昆虫がまわりの環境に擬態するように、一つの商品が多様に変化するようデザインしたという。色や柄だけでなく、その構造も不思議。「なんでこうなるの?」と戸惑う感覚にもなる。
例えばレイヤーストールは、中心でつながり「X」の形状となっている。これは、2枚別々で織った生地を後から縫い合わせるのではなく、2枚同時に織っている。真ん中でテクニックを変え、部分的に1枚にした。
首にかければ、それぞれ柄の異なる生地が、左右に2枚ずつ垂れる状態になる。4つの違う柄を楽しめるだけでなく、ボリュームのある巻き方や、一方のみ巻くなど、なん通りにも巻き方を変えることができる。
パッチワークのように見える部分や、フリンジや凸凹感は、通常糊付けや縫い付けするようなもの。しかしこれも織りだけで表現。両面で色を反転させたり、1枚の半分ずつで柄を変えたり……コンピュータ・ジャカード織機を駆使し、自由なデザインを描き出す。
西脇産地は、糸を染めてから織る「先染め」を得意としており、シャツなどに用いられるチェックやストライプの縞柄が代表的。このイメージを覆し、織ることの可能性の広さと楽しさを伝えたいと、丸萬が立ち上げた。
ディレクションを担当するのは、丸萬と生地開発を約10年続けてきたという梶原加奈子。同氏は、生産者らと密に協力関係を築きながら、日本の生地産地の持つ技術や魅力を、デザインの力で広く伝える素材開発や商品企画を行っている。「POLS」も、丸萬の企画チームらと素材開発から話し合い、一丸となって開発したという。
梶原はデザインにあたっての思いをこのように話す。
布は平面に見えますが、拡大すると立体構造になっています。立体の組織の組み方によって、実に多様なデザインが可能になります。
それを生かして「POLS」の布は、一枚が何度も表情を変えて、いくつもの役割を持つことができます。使う人が、新しい使い方を日々発見できる布を作りたいと思いました。
試作を重ねて、風合いや手触りを何度も確かめた。織り方だけでなく、糸の太さや種類、密度を変えれば、さらに多様な仕上がりを生むことができる。
今後は定番になるアイテムを中心に、季節にあわせて、新作を追加していく予定。早速期間限定ショップが多数企画されているという。タテ糸とヨコ糸のマジックに、注目が集まっている。
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