ジュエリーブランド「EDAYA」による「『わたし』と『社会』のリ・デザイン展」レポート

2015. 7. 25

「マイノリティーのエンパワーメント」をテーマに、失われつつあるフィリピンの北ルソン・山岳先住民族の生き方に影響を受けたデザインと、その土地に受け継がれてきた精巧な職人技のコラボレーションによるジュエリーを展開している「EDAYA」。

その「EDAYA」が主宰する、フィリピンの山岳先住民族「カリンガ」の世界観を発信することを通じて、「個人」と「社会」のつながり(関係性)を見つめ直す展覧会「『わたし』と『社会』のリ・デザイン展 -「EDAYA」 JOURNEY展vol.2-」を、2015年5月31日~6月7日の8日間にわたって開催しました。

展示だけではなく、さまざまな分野で活躍する多彩なゲストを迎えたトークイベントやライブが行われた展示会の模様をレポートします。

個人と社会のつながり

展示会場となる六本木ストライプスペースのドアを開き進むと、まず現れるのが竹を使ったインスタレーション「Wisdom Junction」。

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こちらは、まさに今回の展示のテーマである「わたし」と「社会」を表現したもの。捉え方は人それぞれですが、たとえば一つの捉え方としては、インスタレーションの真ん中が個人、つまり私を表し、その周りが家族や友だち、自分の半径数メートルの社会や人とのつながり。そしてその周りに村があり、世界が広がっていきます。

「EDAYA」のプロデューサーである山下さんはこう語ります。

「Wisdom Junction」というタイトルは、来場者のみなさんが、人々、文化、思考、体験といったさまざまなwisdomと出会う瞬間をこの空間に作り出したいという思いからつけました。社会の中で「わたし」は一体何とつながって生きていて、何を選んで生きているのだろうということを、あらためて考えるきっかけとなるインスタレーションを目指しました。

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階段を下り地下一階へ降りると、フィリピンの山岳先住民族「カリンガ」約50名に行った取材の映像や写真が展示されています。

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村の子供たち、海外に出稼ぎへ行っていたシングルマザー、鉱山夫や刀作り職人。村民に流れている根底の思いは同じだけれど、それぞれに描いている未来や大切にしていることは違い、一つの村の中での暮らしに中にもダイバーシティがあります。

個人と社会のつながりを俯瞰した先ほどのインスタレーションの後に、広い世界から凝縮された世界を見てもらい、自分と対峙してもらうことが、この展覧会のメッセージです。

カリンガ族の竹文化をモチーフにしたジュエリー

会場では、「EDAYA」のジュエリー販売も行われていました。

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ジュエリーは全て、カリンガの残り3人ともいわれる竹楽器職人エドガー・バナサン氏の作る竹楽器を用いて作られたもの。竹楽器のミニチュアのほか、弓矢や雷除けである蛇の骨や、女性の子宮のマークなど、カリンガ族の生活に取り入れられているものがモチーフとなっています。

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文化継承のためだけでなく、伝統文化を生かしたジュエリーを日本に届け認められることで、それを村へ還元し、カリンガ族が自身の文化に誇りを持ちエンパワーメントされていくことを目的にしているそう。

力強く、格好良く生きる女性と伴走し、身につける女性自身もエンパワーメントされそうな、華やかでユニークなジュエリーが揃っています。

3周年を迎えさらに成長する「EDAYA」

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このほかにも期間中には、ビジネスや伝統芸能などの分野で活躍する多彩なゲストを呼び、どのように社会との関係性を紡いできたのかを紹介するトークイベントや、アラブなど他国の音楽を演奏するアーティストによるライブイベントなどが行われました。

イベントでは、さまざまな分野で活躍する人たちが、実際に自分と社会とのつながりをどう考え、育みながらいまに至ったのかをご紹介いただきました。それを聞いた来場者のみなさんが、それをきっかけに自分にとっての社会との関わりを考え始めてもらえたらと思ったからです。インスタレーション、写真、アクセサリー、イベントと、さまざまな側面から、何かしらみなさんがインスピレーションを持ち帰ってくださったとしたら本当に嬉しいです。

「EDAYA」は途上国で作られたプロダクトを販売することで雇用を生み出すだけでなく、それによって社会的なメッセージを伝えようという姿勢を持っています。今回の展示会も、ジュエリーのみならず、調査のレポート、インスタレーション、音楽など、多様な手段を使ってブランドの世界観を届けようとしています。

このブランドが生まれている土地の人たちの写真を見たり、インスタレーションを通じて肌感覚で「EDAYA」の世界を感じることで、従来のフェアトレードやエシカルファッションのブランドよりも、その輪郭が明らかになり解像度が上がるのではないでしょうか。

大きな前進のためのステップとなったというこの展覧会を経て、今年の秋「EDAYA」は3周年を迎えます。ジュエリーブランドから始まった「EDAYA」は、さらに大きな次元へと脱皮していくことがとても楽しみです。

今後の「EDAYA」にもぜひご注目ください!

取材・文 工藤瑞穂

EDAYA

Website:http://edaya-arts.com/

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