美しいダイヤモンドには、「美しくない」問題がたくさん絡んでいる。搾取される零細採掘労働者、環境破壊に児童労働、そして紛争の資金源になること……自国が誇るべき資源が、「美しくない」問題を孕んでいることを取材したジャーナリストが、自国の政府高官たちによって起訴され、懲役2年(執行猶予6カ月)の判決を受けた。
アンゴラのジャーナリスト、ラファエル・マルケス・デ・モライス氏が出版したのは、「ブラッド・ダイヤモンド~アンゴラの腐敗と拷問」(日本語版未出版)。この書籍は、2009年から2011年にかけてモライス氏が行った聞き取りを主とする現地調査に基くもの。ダイヤモンド採掘地域における500件の拷問と100件以上の殺人事件を公表したほか、それらは腐敗した政府高官たちによる組織的犯行であると述べた。
同氏は調査中、アンゴラ当局に調査結果やメモを押収されるなど、嫌がらせを受けたとも。嫌がらせを乗り越えて2011年、ポルトガルで同書を発表することに成功した。また同書籍出版後、モライス氏は拷問や殺人の責任者として考えられる9名の将軍と警備会社経営陣をアンゴラ国内で提訴。政府による詳細な調査を求めた。
しかし訴えられた将軍や企業経営者たちは、モライス氏と出版社を名誉毀損等の罪で、ポルトガルにおいて提訴。ポルトガルの裁判所は、証拠不十分として同件を棄却したものの、この結果を不服とする原告たちは、次にアンゴラの裁判所で提訴。この裁判でモライス氏は、証人を呼ぶことも証拠を提示することも許されなかったという。そして2015年5月28日、懲役2年執行猶予6カ月の判決を言い渡された。モライス氏は控訴予定だという。
この不公平な判決を受け、言論の自由を促進する活動を実施しているイギリスのNPO・Index on Censorshipが、モライス氏への起訴取り下げを求める公開書簡を企画。欧米の著名人や企業・団体等70以上の署名を集め、2015年6月4日に在ロンドンのアンゴラ大使館に届けた。署名したのは、ティファニー社、イギリスのIT起業家マーサ・レイン・フォックス、ウィキペディア創設者のジミー・ウェールズのほか、映画『それでも夜は明ける』の監督スティーブ・マックイーンらなど。日本からも、ダイヤモンドについての啓発活動・採掘労働者を支援するNGO・Diamonds for Peaceが署名している。
アンゴラは世界第4位のダイヤモンド生産国。年間約600万カラットのダイヤモンドを生産している。紛争ダイヤモンド原石の流通を予防するキンバリープロセス認証制度では、同国産のダイヤモンドを2004年から認証。同書の取材期間にあたる、2009年〜2011年の間に採掘されたダイヤモンドは、正規のルートでダイヤモンド市場に流通していることになる。
対する日本は、世界第4位のダイヤモンド消費国。私たちの手に届いている可能性は決して否定できない。それらダイヤモンドは、殺人や拷問を経て採掘されたものだ。
コメントを投稿するにはログインしてください。