2015年春より日本に本格上陸したアクセサリーブランド「MUJUS(ムフス)」。「MUJUS」とは古いペルーの言葉で「種」を意味する言葉。その名前のとおり、タグア椰子の種子が素材。まるで象牙のような質感に、「ベジタブル・アイボリー(植物象牙)」と呼ばれ、高級メゾンのボタンになるなど、愛用されている素材です。
この素材を使って、ペルーやエクアドルの女性職人たちが手仕事で作ったアクセサリーを、ニューヨークから発信するのはブランド創設者でありデザイナーのPaola Delgadoさん。2009年のブランドローンチから愛され続ける「MUJUS」のルーツについて、Paolaさんに尋ねました。独自の経歴ならではの、パワフルな挑戦を振り返ります!
―― もともと金融業界の出身だそうですが、対極の業界に感じます。大きなキャリアチェンジをした理由は?
生まれも育ちもペルー。高校生のときにアメリカにやってきて、就職するときにニューヨークに出てきたの。それからウォール・ストリートの投資銀行に4年務めていたんだけど、すっかり燃え尽きてしまって……。毎日何時間もパソコンの前に座っているばかり。この手を動かして何かを作りたいと思うようになったの。何か意味のあるものを作りたい一心で、母国・ペルーに戻ったわ。およそ1年掛けて、アンデスの山々やジャングルを巡りながら、自分のルーツがどこにあるかを探していたわ。
その途中で、千年以上もの間、代々受け継いできた手法でジュエリーづくりをしているコミュニティに出合ったの。素材も、受け継いできたオーガニックな素材を使っていてね。ジュエリー製作を学んだことはなかったけれど、その村に数カ月滞在して、彼らの技法を学んだわ。
そのとき、2つのゴールが生まれたの。一つ目は、職人たち、特に女性の職人たちの生活水準を上げること。二つ目は、母親たちに柔軟なワークスタイルを提供すること。生活賃金を得て、さらに子どもとの時間を確保できる働き方を、彼女たちのために作りたいと思ったの。
2011年から、ペルーの首都・リマにあった父の家でデザイン・ワークショップを開いたわ。それが「MUJUS」のいちばん最初であり、私の新しい人生の一歩を踏み出したときよ。
―― ご自身にとって未知の業界です。どうやってビジネスを成功させたのですか?
トライ・アンド・エラーの繰り返しだったわ。南米の多くの国がそうであるように、ペルーにはビジネスにおけるガイドラインがないの。その代わり、何がうまく行って何がそうでなかったか、自分でノートを取って、理解していかないといけなかった。それを繰り返してきただけよ。
スタッフは口コミで集まって、リマに小さな作業場を作ったわ。南米でスモールビジネスを始めるときは、往々にしてそういった人のつながりが必要ね。その作業場は、ペルー各地の職人グループを管理しているの。この作業場が、出荷前の最終品質チェックの場でもあるわ。
―― タグアのどんなところに魅力を感じたのですか?
タグアは何にでも使える、汎用性の高い素材。まるで木材のようで、彫刻のように扱っていろんなかたちにできる。染めて色をつけることもできる。クリエイティビティを刺激されるわ。それに、タグア種子はとってもサステナブルな素材。もともと、椰子の木全体が昔から余すところなく使われているの。葉は編まれて住宅の屋根に、幹は床に。根は薬草として使われてきていて、私たちのアクセサリーを始め、民芸品にも使われる種は、自然に落ちてきた実のものだけを使うの。そういったところも、私の新しい挑戦にはぴったりだと思ったわ。
タグア椰子は、天然の生きた素材。前と同じ配合の染料で染めても、同じようには染まらなかったり、まったく違う色に仕上がったりするのが難しいところね。何度も染めなおして規定の色に仕上げることもあるわ。何度もトライするしかないわね。
―― どのようにデザインしているのですか?
あらゆるものからインスピレーションを受けるわ。すてきな洋服を見て「これに合うものを作ろう」というときもあれば、絵画からインスパイアされることもある。日々、すてきだな、と思うものを写真に撮っておいて、デザインするときにそれらの写真を眺めて作っているわ。
特定のターゲットは想定していなくて、美しくなりたい人には誰でも「MUJUS」を試してみてほしい! 個性が強いアクセサリーに見えるけれど、着ける人を選ばないデザインになっているの。見た目だけじゃなく、心の着け心地も良いアイテムよ。だって、それを身につけることで、誰かの人生に貢献してるんだもの。
―― ビジネスを続けるうえで、難しいと感じるのはどんなところですか?
何をやるにしても、どこにも正解がないこと。誰かが「こっちに進んだらいいよ」なんて、安全な道を教えてくれるわけでもない。孤独な作業だと思うわ。そのぶん、有名なレーベルから引き合いがあったり、投資家が現れた瞬間はとても嬉しい! いま、ジュエリーだけを展開するのではなく、総合的なアクセサリーブランドとして成長していくために、戦略を練り直しているところ。もっと深く「MUJUS」のメッセージを届けていきたいわ。
―― 日本への上陸にあたって、メッセージをお願いします。
日本への進出は、誇らしいこと。日本の人々の、非常に高い品質を求める姿勢を尊敬しています。日本のお客さまにもステキだと思っていただけるようなクリエイティブなアイテムを準備したので、気に入っていただけると嬉しいわ!
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