当連載ではこれまで、ダイヤモンドにまつわる課題(第1回)と、紛争ダイヤモンド原石を予防するための認証制度「キンバリープロセス」の課題ついて(第2回)解説してきました。
紛争の資金源、児童労働、強制労働、環境破壊などを経て採掘されたダイヤモンドは、通常のサプライチェーンに紛れ込み、ジュエリーとなって私たちの手に届いています。第3回の今回は、その背景をお伝えします。
禁輸措置は現地の採掘停止を意味しない
最初に、内戦・紛争が起こっているという理由で国連が「A国はダイヤモンドを輸出禁止」「他の国はA国からダイヤモンドを輸入禁止」と、禁輸措置を発動しても、A国におけるダイヤモンド採掘が停止するわけではありません。
現地で採掘労働に関わっている人々には、ダイヤモンド採掘以外に仕事がない場合が多く、「採掘できない=売ることができない」という事実は、死を意味するからです。
例1:西アフリカ・コートジボワール
2002年から断続的に続いていた内戦のため、国連はダイヤモンドの禁輸措置を発令しました。キンバリープロセスは、2004年から2013年のコートジボワールのダイヤモンド産出量・輸入量・輸出量の全てがゼロだったと報告しています※1。
しかし、筆者が2015年1月に現地を訪問して入手した情報によると、採掘労働者は日々の糧を得るため、内戦中も採掘活動を続けていました。禁輸措置発令前と比較すると採掘の規模は縮小したそうですが、非公式ルートでの販売は難しくないといいます。マリやブルキナファソからの仲買人が、喜んでダイヤモンドを買ってくれるそうです。
同国のダイヤモンド禁輸措置は、2014年4月に解除されました。しかし同国政府は、小規模零細採掘※2されたダイヤモンドを公式に輸出できる業者をが任命していません。現在、小規模零細採掘されたダイヤモンドの全てが非公式ルート、つまり密輸されて外国に流れています。この事実は、現地で業界にいる人ならば誰もが知っており、政府も認めています。
例2:中央アフリカ共和国
2012年に世界第10位のダイヤモンド産出国となった中央アフリカ共和国では、同年12月に勃発したキリスト教徒とイスラム教徒が対立する内戦が現在も続いています。いまは禁輸措置が取られており、キンバリープロセスの公式報告では、2013年のダイヤモンド産出量・輸入量・輸出量は、全てがゼロと報告されています※3。
しかし禁輸措置の発令後も、最低でも14万カラット(約24億円相当)のダイヤモンドが、中央アフリカ共和国から外国に密輸され内戦の資金源になったとの報道があります※4。
コメントを投稿するにはログインしてください。