マイクロアルジェ(微細藻類)を知っているだろうか? 顕微鏡でしか見えない小さな藻で、植物性プランクトンとも呼ばれる。広義では、昆布やワカメといった大型藻類(マクロアルジェ)も仲間だ。マイクロアルジェは地球最古の生命と考えられており、世界遺産にも指定されている。
このマイクロアルジェが地球で最初に光合成を行い、酸素を作り出した。そして地球環境の基礎を作り、生物の進化を促した。さらに太古のマイクロアルジェが海底に堆積し、永い年月を経て石油となるのである。
さて、このマイクロアルジェは近年、バイオテクノロジーの観点から注目を集めており、さまざまな応用が試みられている。医薬品や化粧品、新エネルギーに新素材……さまざまな可能性を秘めているものだということだが、ここで、あるベルリンのファッションデザインスタジオも、いまのところまだほかでは見つかっていない可能性を、この生物から見出したようだ。
ベルリンのデザインスタジオ「Blond&Bieber(ブロンド・アンド・ビーバー)」がマイクロアルジェに可能性を見出したのは、染め。ドイツ全土に67の研究所・研究ユニットを持つ欧州最大の応用研究機関Fraunhofer Institute(フラウンホーファー研究機構)とともに、デザインデュオ・Essi Johanna Glomb(テキスタイルデザイナー)とRasa Weber(プロダクトデザイナー)は、マイクロアルジェを使って染めたシリーズ「Algaemy」を開発・発表した。
ラボの中でマイクロアルジェを培養、ローラーを使ってプリントをしていく。二人はこの一連の作業を「アナログ・プリント」と呼んでいる。マイクロアルジェの種類によって、青・茶・赤と、いろんな色が出せるのだという。マイクロアルジェは、適切な環境さえ与えていれば、自ら増殖する。すなわち、他に燃料や原料のいらないエコな顔料になるのだ。
さらにこれらの色は、太陽光に当たると美しく変色する。緑はターコイスブルーに、ペールピンクはスカーレットレッドへと変化する。2014年に「Milk & Sugar」というファッションショーで、デザイナー・Ylenia Gortanaために2つの服を提供した。キャットウォークに飛び出した瞬間、色が見る見る変わっていったという。この変色の様(さま)を、二人は「時の物語を語っている」と表現するーー「人は変わる。生地も変わるの」とも。
このプロジェクト「Algaemy」は、Lodz Design Festivalをはじめさまざまな賞を受賞しており、シューズブランド「Trippen(トリッペン)」とのコラボも実現。技術の今後に期待が高まっている。
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