ボリビアの先住民でチチカカ湖周辺に住むアイマラ族の女性たちは、何百年もの間、編み物や織物の技術を親から子へ伝え続けてきた。その技術がいま、最新医療技術に一役買っており、心臓に穴が空く先天性心疾患の子どもたちの治療に生かされているようだ。英・BBCで話題の記事を紹介する。
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※写真はイメージです(Photography by Shilpi Agrawal / Via Flickr)
英・BBCが報じたところによると、彼女たちが受け継いできたハットやセーター、ブランケットを織る高度な技術はいま、心臓の穴を塞ぐための器具(オクルダー;平線咬合器)に用いられているという。
この技術を考案したのは、循環器専門医・Franz Freudenthal医師。彼は、ボリビアの主要都市・ラパスにクリニックを持っており、心臓に疾患を持つ子どもたちを何百人と治療してきた人物だ。
彼がデザインした器具は、トップ・ハットに似た形状をしたもので、大量生産できないほど小さなもの。そこで医師が依頼したのが、先住民族の女性たちだった。
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トップ・ハットのようなかたちをした器具。小さいものの、手編みなのでいろんなサイズに仕上げることが可能。(Image Via: http://www.bbc.com/news/health-32076070)
この器具を編むのにかかる時間は2時間程度。女性たちは特別に除菌された部屋の中で編み物をしているという。器具は、軍用に使われる伸縮性のある形状記憶合金の紐でできており、血管を通るときは小さく畳まれており、適切な位置に届くと元のかたちに戻って穴を塞ぐしくみ。開腹手術なしで済むため、子どもへの負担が少ない。
この先天性心疾患を持って生まれるケースは世界でも少なくはないが、海抜4,000mという高度に位置するラパスの場合、酸素が低いために他国よりも発症率が10倍も高いという。自然に塞がる場合もあるが、塞がらなかった場合は、心臓に通常以上の負担がかかるため、ふつうの子どもと同じように動きまわることはできないという。
担当している女性の一人・Daniela Mendozaさんは、BBCの取材の中で「誰かの命を救うために何かできるなんて、とても幸せなことだわ」と話している。
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