両足義足で活動するアーティスト・片山真理さん。両足とも脛骨欠損という、主幹を成す太い骨がない病気を持って生まれ、9歳のときに両足を切断しました。以来その独特な身体を介し、自分と自身を取り巻く世界との関わりを作品にし続けている彼女が、初の個展「you're mine」を開催しました。
→インタビュー「両足義足でハイヒールを履くという選択 / アーティスト・片山真理さん」
「本当の片山真理」への要求
しかしそんな経緯で生まれた作品が、真理さんに戸惑いをもたらすようになります。
人はセルフ・ポートレートを見て、「こうやってふだん生活してるんですね」って言ってくださるんですけど、これらの作品は、ふだんの生活でもなんでもないんですよ。箱も義足もパソコンの配置も、そして私自身も同じように写り込ませて、全部ぜんぶ計算して作り出した「片山真理像」。「外っつら」でしかないんです。
同時に、注目を集めるようになるにつれ、メディアに出演する機会も増えてきた真理さん。そのことが、彼女にいっそうの葛藤をもたらします。
よく「片山さんはとってもがんばりやさんで、両足義足でいじめられたり辛いことがあってもがんばってきた」っていうのが「本当の片山真理」だって演出をされたりする。
でも「普通の人」と比べるとそりゃあたいへんだったかもしれないけど、「しょうがない」って思ってきているし、「たいへんだったんです!」なんて姿を見せたいと思ってない。だから、そこでちゃんと「違う」って主張して流れを軌道修正しなきゃって、また自分の「外っつら」を作らないといけなかったんです。
いちばんのきっかけになったのは、3年半に及んだテレビの密着取材。最後は「もうカメラ向けないでください」っていうくらい疲れてしまったのだそう。見せたくない自分を見せないよう、「ぜったい折れるわけにはいかない」と、常にカメラの前で自分を作る日々が続きました。
それですごい疲れちゃったのかもしれないですね。だって、「外っつら」を作るのって、誰もがしていること。会社の自分と家の自分はぜんぜん違うし、友だちにだってそれぞれ見せる自分って変えたりする。
だけど、なぜ人間ってそういうふうにするようできてるんだろう? ってすごい考えたときがあったんです。
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