服を身にまとうようになって何百年と経ったいま、SF映画に出てくるようなぬらりとしたボディスーツなんかはやっぱり誰も着ていない。あいも変わらず人間は「生地」を身にまとっているし、服は針と糸で縫われている。服はやっぱり社会的な役割や自分がどういった人間であるかをを象徴するための「記号」であるし、気分や見た目をシフトするための道具である。
でも、もう少し何か変わることはできないか? 服という概念を変えてしまう全く新しい”進化”を、そろそろ何か遂げてもいいんじゃないか?
ーーそんな”あたりまえ”に対して問いかけるナレーションで始まるのが、大手電気メーカー・AEGが制作したドキュメンタリー映画「The Next Black」。同映画は、未来のファッションのあり方について考えるもので、サステナビリティとテクノロジーの2つの大きな切り口に加え、さらに多様な視点からファッションと衣服のあり方について考察をしている。
(※エグゼクティブプロデューサー・Lovisa Sunnerholmが、0:52前後から映画について説明)
テクノロジーを着る
ヒップホップユニット・Black Eyed Peasや歌姫・Lady GaGaにも衣装を提供する「StudioXO」では、3Dプリンターなどの最新機器を揃え、着るテクノロジー、すなわち「ウェラブル・テクノロジー」の研究・開発を行っている。双方向的なコミュニケーションが存在する「インタラクティブ」で、それ自体で進化・変貌する衣服を、一般的なものにするのが夢だという。
この「ウェラブル・テクノロジー」の具体的な例として、「Adidas」のドイツでの事例を紹介。サッカー選手のユニフォームにデジタルデバイスを組み込み、その心拍数や走行距離など、仔細なデータを取得するというものだ。衣服は身を守るための存在から、身体機能をアップするためのパートナーに変容していくのかもしれません。
サステナビリティを着る
しかし、いかなる最新テクノロジーであっても、今後の技術は地球を破壊するものであってはだめーーと続くナレーション。そこでまず紹介されるのは、「Biocouture(ビオクチュール)」という衣服クリエーションのあり方。そこで、セルロース由来の微生物を使って、発酵液体の大桶の中で生地を「育てて」いるSuzanne Leeを訪問した。
Suzanne Leeの生地のレシピは緑茶、砂糖などがベース。それをタッパーの中で、温度や湿度を管理することで菌の活動で生地なるものができるという。彼女は、「ビールを醸造するように、生地を”育てて”いるのよ」と説明する。
この100年のうちに、服はそれまでオーダーメイドで作っていたものから、規格が統一され一括で生産されるものに変わった。さらにその流れを早めたファストファッションはアパレル流通・消費のあり方を根底から変えた。しかしそれが流行してから、世界のテキスタイル生産量は47%も増えたーーと、さらに映画は進む。
米・ECOUTERREによれば、AEGのクリーニング部門の責任者・Ola Nilssonは、「家電メーカーとして洗濯機なども取り扱ううえで、『次』に我々の服がどうなっているかを知る必要があった」と話しているという。その進化によって、衣類ケアは大きく変わるからだ。同氏は衣類ケアの段階でのサステナビリティの重要性も強調。服を長く着るためにやさしい洗いを提供することが同社のミッションの一つであるとし、消費者にもそのために情報提供をしていきたいと話しているようだ。