100%エシカルなサプライチェーンで1兆円を目指す 〜石川社長に聞く、クロスカンパニー新ブランド「KOE」

A Picture of $name HITOMI ITO Photography Courtesy of 株式会社クロスカンパニー 2015. 2. 5

創業20周年のクロスカンパニーが立ち上げたブランド「KOE(コエ)」が、9月に岡山市内の1号店でスタートした。「フェアサプライチェーン」をキーワードに、世界進出を狙う国際戦略ブランドとして、売上高1兆円の目標を掲げている。宮﨑あおいがCMに出演する「earth music&ecology(アース ミュージック&エコロジー、以下「アース」)」などのブランドで急成長してきた同社にとって「KOE」とはどんな意味を持つブランドなのか? なぜ「フェアサプライチェーン」に取り組むのか? 代表取締役社長の石川康晴氏に聞いた。
(※取材を行ったのは、2014年9月3日です。)

クロスカンパニー・東京本部にて。 石川康晴(いしかわ・やすはる)クロスカンパニー代表取締役社長 1970年生まれ。94年岡山市に4坪のセレクトショップを開業。95年クロスカンパニーを設立。99年SPA(製造小売業)へと組織転換し、主力ブランド「earth music&ecology」を立ち上げ、そのほか10のブランドを展開する。2011年中国進出。全社員が正社員、うち92%が女性。

クロスカンパニー・東京本部にて。〈筆者撮影〉
石川康晴(いしかわ・やすはる)クロスカンパニー代表取締役社長
1970年生まれ。94年岡山市に4坪のセレクトショップを開業。95年クロスカンパニーを設立。99年SPA(製造小売業)へと組織転換し、主力ブランド「earth music&ecology」を立ち上げ、そのほか10のブランドを展開する。2011年中国進出。全社員が正社員、うち92%が女性。

ウィメンズ、メンズ、キッズ、ジュニア、マタニティまで網羅した幅広いラインナップ。

ウィメンズ、メンズ、キッズ、ジュニア、マタニティまで網羅した幅広いラインナップ。

ーー「KOE」で本格的な世界進出、そしてフェアサプライチェーンを作ると掲げている。なぜ、基幹ブランドである「earth music&ecology」ではなく、新しいブランドを立ち上げることにしたのか?

「アース」は現在、日本240店舗、海外100店舗を展開しています。これを続けながらフェアなサプライチェーンに変更していくとなると、非常に大きな改革になります。一から新しいブランドを作り、新しいサプライチェーンを整備していくほうがスムーズになると考えました。

また、「アース」はアジアでしか展開する予定がありません。「エシカル」というテーマに対するリテラシーは、欧米のほうが高いです。欧米に出て行くブランドでこそ「エシカル」を打ち出すべきじゃないかと思いました。

欧米にある「ファストファッション」と呼ばれるブランドが、いろんな指摘を受けながらエシカルなものづくりに変えていっています。しかし、まだまだ完全な状態になっていません。我々が目指しているのは、100%完璧にフェアなサプライチェーン。それを、ブランドのローンチから3年で達成します。

ーー「KOE」は2020年度には売上高1,000億円、将来的には売上高1兆円の事業規模を目指すとのことだが、かなり高い目標といえる。

「KOE」は、「アース」以上の基幹ブランドに育てます。2016年のIPOの主眼は、グローバルブランドとして「KOE」を成長させる戦略にあります。ニューヨーク、ロンドン、上海、北京の目抜き通りに店を作るとなると、200〜400坪/700〜1200平米の大型店舗を作らなければなりません。いままでより、投資回収に時間が掛かるビジネスモデルになっていくと予想しています。最終的にアフリカ進出も視野に入れており、90〜110%の価格変動率で、世界均一プライスを実現していきます。

ーー「100%完璧な」フェアサプライチェーンは、貴社規模の企業で達成するなら「前人未到」と言っていいと感じる。どのようにしてそれは整備しているのか?

3億円規模までのブランドでフェアな調達をして販売している企業はたくさんあります。しかし1千億を越えた企業でフェアサプライチェーンを本気でやるとなると、強いオーナーシップがないとできません。そこは、創業者である私が強い意識で引っ張っていきます。

現在「KOE」のために取引を検討した中国の生産工場は約40〜50工場あります。人権・労動・環境の3側面から検査し、問題ないものを「A・B工場」とし、問題があり取引を停止する工場を「D工場」と、4段階に評価しています。3年以内に、全ての工場を「A・B工場」とすることを目指しています。

今回のブランドのローンチに合わせ、商品部・生産部社員、そして中国現地スタッフによる「フェアサプライチェーン委員会」が工場を調査しましたが、児童労働を行っている工場は1つもありませんでした。しかし、環境に著しく悪い影響を及ぼす工場が14工場ほどあり、それらは取引を停止しました。

また、工場のオーナーの法律に対する理解不足で、繁忙期に長時間労働を行う工場が一部ありましたが、それらに対しては「C工場」と分類し、厳しい指導をして改善をしてもらっています。

労動環境面で問題がない工場は「B工場」と認定します。「B工場」には、弁護士や著名人を入れた社外の第三者による調査委員会が抜き打ちで調査に入ります。抜き打ち調査でも人権・労動・環境に対して問題がないと認定できた段階で、「A工場」と認定しています。

ーー問題視されている、工場による隠蔽工作などへの対応はどのようにしているのか?

第三者委員会による抜き打ち検査では、従業員にローラー作戦でインタビューを行います。

確かに工場のオーナーインタビューだけでは不十分で、不正を隠蔽して「B工場」の認定を取得した工場もありましたし、隠蔽の疑いのある工場もありました。だから、「B工場」だけで「フェアサプライチェーン」を標榜したくありません。またローラー作戦でインタビューをしても、グルになっている可能性も否めませんし、「A工場」と認定できたところでも、オーナーが変わってその質が低下する可能性もあります。

だから第三者委員会による検査は、定期的に抜き打ちで行っています。何度も抜き打ちでチェックしています。社内のフェアサプライチェーン委員会と、第三者委員会の両輪でチェックしているのは、弊社の特徴だと思います。

Next:「KOE」が目指すフェアサプライチェーンについて

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