西荻窪駅を降りて徒歩2分。駅の横道を入ってすぐ、全国の福祉施設で作られた手仕事品のセレクトショップ「マジェルカ」はあります。
2011年9月にオープンして以来、ショップを開いた藤本光浩さんは、全国の福祉作業所と市場をつなぐ仲介人として一目置かれる存在。「マジェルカで扱ってほしい」という声は後を絶ちません。
もったいないだらけのブルーオーシャン
「でもいくつか福祉ショップを訪ねると、本当に残念だったんです。どこも『売ろう』って気概が感じられない。商品の良さをアピールできていない。僕にとってそれは、モノを大切に思っていないことだし、背景の作り手を大切に思っていないことにも感じました」。
それで『自分でお店を作ってしまおう』という気になりました。こんなに良いものがあるのに世間に知られていない・アピールできていないことがもったいない。本来そのための場であるはずのショップが『なっていない』のももったいない。福祉施設のスタッフさんたちが、自分たちが持っているポテンシャルを自覚していないのももったいない。そのうえ、まだこのフィールドに目をつけている人も少ないーーまさにブルーオーシャン。シンプルに、ビジネスチャンスがあるかもしれないと思ったんです」。
出合って驚いた、知られていない価値を伝えるために売る
「『売る』って、単純なモノの売り買いではないと思うんです。例えば、中世のシルクロードなどで交易を担った商人たちは、モノのやり取りを通じてその背景にある文化を交流させ、さらに発展させる役割も担っていました。新しい文化というのは、知られていない価値のことだと思うのですが、いまの時代、もうそんな知られていないものもないんじゃないかと思っていました。でも、福祉施設ですばらしい手仕事品と出会い、さらにその背景にいる障がいを持つ人々のポテンシャルを知り、『この世の中に、まだ知られていない価値があった!』と素直にうれしかった。だからやろうと思ったんです」。
「大仰な話もしてしまいましたが、シンプルに『売る』っておもしろい。『(モノを)どう見せたら良いかな?』『こうやって並べたらどうだろう?』と考えて陳列した効果が、はっきり見えるのが醍醐味です。だけどそれに凝るには、店が手狭になってきました。そこで、7月に吉祥寺に移転します。今より売場が4倍もの広さになるので、またいっそう丁寧に商品を見せていきたいですね」。
「最初は、『こんな良いモノ作ってるんだ!』っていう驚きがきっかけでしたが、いまだに『こんなスゴイものもあった!』と、驚かされます。障がいを持つ方々が地域の資源や一人ひとりの力を組み合わせてものづくりをしているのを見ると、きっとこれからも驚かされるんだろうと思います」。
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