アフリカで最も有名な部族の一つ「マサイ族」は近年、独特のビーズアクセサリーがファッションとして注目を集めている。その魅力はやはり、色鮮やかな独特の配色。もともと同族は、1800年代後期にヨーロッパ人が進出するまで貝殻や種、乾燥させた草などをアクセサリーにしていたといわれており、ヨーロッパ人との交易を通じてビーズアクセサリーを作るようになったという。アフリカの広大なサバンナの中で、いったいどういった景色がこの色彩感覚を産んだのだろうかと、その風景に思わず思いを馳せてしまう。
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アフリカの大地に濃厚ながらどこか透明感あるカラーコントラストがマサイ族の色。(IMAGE:「PIKOLINOS MASAI PROJECT」14SSコレクションカタログ)
このマサイDNAの詰まったビーズワークをあしらったサンダルシリーズ「マサイ・コレクション」を発表したのが、スペイン発のシューズブランド「PIKOLINOS(ピコリノス)」。ケニア・マサイ族の女性たちによる手作業のビーズ刺繍を施したモチーフパーツを、スペインの自社工場で靴に仕上げたコレクションだ。
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「2014年春夏マサイ・コレクション」から左:ローマ人風サンダル(26,500円〈税抜〉)、右:コルク調ウェッジヒール(24,500円〈税抜〉
今回の春夏コレクションのデビューにあたり、「マサイ・コレクション」の起案から尽力してきたマサイ族の一部族のリーダー、ウィリアム・キカナエ氏が来日。そのウィリアム氏に、マサイビーズの魅力について詳しく聞いてみた。
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ウィリアム・キカナエ氏(IMAGE: Fragments)
――「PIKOLINOS」の色である赤は、ビーズに服と、マサイ文化の象徴的な色でもありますね。赤はいったいどんな意味を持つのですか?
赤はマサイ人の色でたくさんの意味を持つ色です。「血」であり、「ミルク」でもあります。また、赤は「黒」の意味も持っていますが、「黒」というのはアフリカを意味します。伝統的にこの色を多く使いますが、赤い服はサバンナで目立つので良いですし、何か先人たちの知恵が根づいているのかもしれません。ビーズワークで最もよく使用される色は、他に青や緑です。緑は草、青は自然であり空を象徴しています。また黄色は太陽を意味します。
――アフリカは全体的にビーズの装飾が有名ですが、マサイのビーズワークは特に色鮮やかです。なぜこんなにカラフルなのでしょう?
日々身につける「ファッション」だからではないでしょうか。ファッションは彩り豊かでなければなりません。
――マサイのビーズワークは女性が作る伝統と聞きました。
そうですね、男性は作りません。ビーズアクセサリーの型はたくさんあり(※約40種類あるとも)、女性たちは子どもの頃から親や祖母から教わります。男性・女性ともにビーズアクセサリーをたくさん身につけますが、どれ一つとして全く同じデザインというものはないでしょうね。
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首周りだけでなく、ありとあらゆるアクセサリーがビーズ。(IMAGE: Fragments)
――マサイ族はビーズをどこでいつも調達しているのですか?
マサイ族のマーケットです。ビーズ自体がどこからきているものかは知りませんが、マーケットに行けば売っています。
――なぜビーズを活用したプロジェクトを興したのでしょう?
繰り返しになりますが、ビーズは女性の仕事です。その女性たちの支援になることをしたかったのです。私の母親は私を学校に行かせるためにたいへんな努力をしてくれました。しかしマサイ族の中で女性の立場は男性ほど高くなく、女性の収入源は限られていて、私も教育を続けることができませんでした。それでもし、女性も男性と同じような権利を得られれば、家庭の収入が増えてマサイ族のみながもっといろんな可能性をつかむことができると思いました。「PIKOLINOS」は私の考えに賛同してくれて、このプロジェクトを生み出してくれました。
――プロジェクトの中で、たいへんだったポイントはなんですか?
女性たちはプロジェクトの意味を分かってくれているので協力的で、あまりたいへんということもありません。強いていうなら、定住しておらずあちこちにみんな住んでいるので、素材の配布と納品する品の回収がたいへんというところでしょうか。道も整備されていませんし。でもそれがマサイ族なので、気にはなりませんね。
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