世界が注目するクリストファー・レイバーン〜革新と成長の裏にあるもの

2014. 3. 18

Christopher Ræburn(クリストファー・レイバーン、以下・クリス)は、ユーズドのミリタリーアイテムやデッドストックのミリタリーファブリックを再生し、革新的なウェアに昇華させることで注目を集めている新進のデザイナー。「Remade in England」をコンセプトに掲げ、英国内での再生産に注力しているが、そのコンセプトのみならず、知的な美しさと細部へのこだわり、高い品質が高く評価されている。

「Fred Perry(フレッド・ペリー)」や「Moncler(モンクレール)」を始め、他ブランドとのコラボレーションも多数行っており、最近ではスイスアーミーナイフで知られる「Victorinox(ビクトリノックス)」とのコラボレーションを経て、同ブランド・ファッション部門のアーティスティック・ディレクターに就任したことでも注目を集めた。

そんなクリスは、イギリスでエシカルファッションが興る当初からエシカルに関わってきた一人。ブランドを興し、成長させるだけでもたいへんだが、サスティナブルでありつつブランドとして世界のメインストリームで注目を集めるまでに成長したクリスは、エシカルブランドの成功例としても注目株。そんな彼がイギリスのエシカルシーンの今をどう見るか、そしてサスティナビリティを保持しつつ成長するためのポイントを探った。

christopher raeburn

CHRISTOPHER RAEBURN
ミリタリー ファブリック(軍装品)から、革新的なメンズ・レディスウェアコレクションを生み出す英国の若きファッションデザイナー。2006年にロイヤル・カレッジ・オブ・アートの修士課程を修了し、 2008年に自身のブランドを立ち上げた。「Remade in England」をコンセプトに、プロダクトはイーストロンドンにある小さな工房で作られている。2009年9月と2010年2月、ロンドン・ファッション・ウィーク「Estethica(エステティカ)」プロジェクトのプロデューサーに選ばれ、 2010年2月にはブリティッシュ・ファッション・カウンシル(BFC)のプログラム「NEW GEN」のスポンサーシップも同時に獲得。また、英国ファッション界のメンズウェア部門で2011年に最も活躍したデザイナーとして受賞しており、いま最もこれからの活躍を期待されているデザイナーの一人。

ーー 以前、軍物に使用される生地の機能性が好きで、結果的にリメイクという手法となったと話していましたね。
そうだね。きわめてハッピーな偶然だと思う。僕はもともと50〜60年前のファブリックが好きなんだけど、それらをいま手に入れようとするととても高価だ。でも当時のデッドストックで、1回も着られていない服なら大量に入手することができた。それでリメイクして使うようになったんだ。特に、軍服は大量にストックされているうえに、軽さや撥水加工をはじめ、機能性が抜群だから魅力を感じたんだ。

初めてリメイク作品に取り組んだのは、大学在学中だったね。

ーー 生地はどうやって入手しているのでしょう?
イギリスのものだけにこだわっていなくて、至るところで調達しているよ。アメリカ、スウェーデン、中国製などの素材を使っているけど、政府の契約しているところからだったり、ebay(※世界最大級のオンラインオークション)でも良いものがあれば使っている。

ーー リメイクというと、既製服を展開するに当たっては、流通に十分な量を確保しにくいといった課題もあります。そのあたりはいかがですか?
成長するにつれてバイイングできる量も増えてきたし、良い生地に巡り合える機会も増えた。僕らの組織がオーガナイズされていれば、ちゃんと回るようになっているよ。

それにミリタリーファブリックの良いところは、大量生産しないといけないことなんだ。足りなくなったら困るからね。だけど使われないままストックされている場合がほとんど。十分な量があるという点も、僕にとっては魅力だったね。

熱い注目を浴びるクリス。今回のコレクションでは、来場者を案内するアテンダントの衣装も彼が製作した

熱い注目を浴びるクリス。今回のコレクションでは、来場者を案内するアテンダントの衣装も彼が製作した。

ーー 現在は世界何カ国で販売していますか?
20〜25カ国・70カ所ほどで取り扱ってもらっているけど、やっぱり一番大きなセールスはイギリスで上げているよ。大手の百貨店、小売企業から小さなショップ、オンラインショップ、たくさん取り扱ってもらっているからね。アメリカと韓国ではレディスが人気。

今後は、カナダ、ベルギーなどのヨーロッパ圏でも販路を広げていきたいし、フィリピン、マカオといったアジアにもトライしているところ。アジアは今後ぜひ精力的に取り組んでいきたいと思っているよ。

ーー 着々と成長をしていますが、生産は現在もイギリス国内なのでしょうか?
ほとんどはイギリスだけど、実は一部はポルトガル、ベルギー、ブルガリアで行っている。そしてイタリアでもいま、試験的に生産をしているところだよ。

ーー あなたから見て、現在のイギリスのエシカルファッションはどうですか?
僕はイギリスでエシカルファッションが発達する初期から関わっていて、「Estethica」の発足にもみんなとともに関わったりした。あれから数年が経つけど、まだまだ道の途中だというところかな。特に大手企業は改善すべき点がたくさんあるよね。

でも僕が希望を持っているのは、サスティナブル・ファッションで学位を取得できるようになったし、教育機関を通じて成長が見られているところだ。ただ、大手企業でもサスティナビリティを専門とする仕事の募集が増えてきているし、着実に前進しているんじゃないかな。ただ、まだまだ時間が掛かりそうだけど。

ーー 日本でもあなたの名前は認知されつつあります。日本はどうでしょう?
「UNITED ARROWS」や「BEAMS」といった大手企業、そして多くのインディペンデントなショップに販売してもらえてとても光栄だと思っているよ。日本の方が、サスティナビリティを含めて僕の服の品質を理解してくれたこともとても嬉しい。サスティナビリティは僕のブランドにとってやっぱり大事な要素だからね。特に日本のメンズを扱うお客さんにとっては、「リメイド」「リメイク」という要素は、けっこうポイントになっているように感じているんだ。

長身のクリス。サイクリングや登山が趣味という。

長身のクリス。サイクリングや登山が趣味という。

ーー 他のブランドや企業とのコラボレーションもたいへん注目を集めました。それらのコラボレーションを通じて自身のブランドはどう成長しましたか?
「Moncler」、「Victorinox」……多くの場合、彼らが僕を見つけて声を掛けてきてくれたんだ。幸運に恵まれたとしかいえない。僕の背が高いからかな(笑)。とにかくありがたいことだよ。

CHRISTOPHER RÆBURNとしても売上がアップしたのはもちろんだけど、「Remade」というコンセプトを広げていくことができた。「PORTER」とのコラボレーションでは「Remade in Japan」、「Victorinox」とは「Remade in Switzerland」……これらのコラボレーションは、僕らのフィロソフィーを彼らが成していることにうまくインテグレートできたことが成功できた理由だと思う。

ーー コラボレーションのときもサスティナビリティに配慮した提案をすることはありますか?
ケース・バイ・ケースだね。だけどそういった提案を全面的にしない場合でも、なるべくサスティナブルな選択をするようにしているよ。例えば「Moncler」とのコラボレーションでは、リサイクル・ファブリックは使用しなかったけど、イタリアやスイスのファクトリーから厳選して生地を選んだ。

ーー リメイク、リメイド以外にブランドを通じて実現したい「サスティナビリティ」があれば教えてください。
実はいま、すごく良い機会に恵まれているタイミングだと思っていて、いま繊維・生地にサスティナブルなイノベーションが起こっている。リサイクル・ファブリックやペットボトルのリサイクル・ファブリック……選択肢がどんどん増えてきているし、これからも増えると思っている。僕がリスペクトするブランドの1つ「PATAGONIA(パタゴニア)」のように、さまざまなサスティナブル・ファブリックを取り入れて、それら技術の進歩を促していきたいと思っているよ。まだまだやるべきことはたくさんあるはずだ。

ーー 最後に、今後の目標や予定を教えてください。
レディスウェアを拡充させていきたいし、「Remade」というコンセプトをアパレル以外の分野、プロダクト、空間、家具などにも広げていきたい。しっかり地に足を付けて、着実に1歩ずつ成長していきたいね。なぜそれをしているのか、ブランドを始めた当初の思いを忘れずにやっていくつもりだ。

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