フィンランドはシンプルかつモダン、機能的でありながら美しい北欧デザイン(スカンジナビア・デザイン)で有名だが、サステナブル・ファッションという点では知られていないーー少なくとも今はまだ。
近年、フィンランドではサステナブル・ファッションがホットな話題になりつつあるが、まだまだゴールにはほど遠い。フィンランドのファッション産業は大半が「古いやり方」で営まれているし、サステナビリティを考えに含めているわけではない。さらにいえば、消費者の大半もファストファッションストアやスーパーで服を買っている(食料品店にだって服が売られているくらいだ)。
しかし、ここ数年で変化は着実に起こっている。サステナブルな商品を求める消費者は増えてきているし、購入時にサステナビリティを考えて選択する消費者も増えてきた。そして、エシカルで環境負荷の低いエコな取り組みをブランド根幹のコンセプトに据えるサステナブルなブランドも増えてきた。
エシカル・シフトに欠かせない新しいビジネスモデル〜衣服図書館
フィンランドでは、フリーマーケットや中古品を売るセカンドハンドショップが人気で、幅広い年齢層と人種・肩書などさまざまな社会的背景を持つ人がセカンドハンドショップで買い物をする。これら以外にもセカンドハンドアイテムを購入できるフィンランドならではの場所がある。それは「クロージング・ライブラリー(Clothing Library; 衣服図書館)」。フィンランドにはすでに3つのクローズ・ライブラリーがあり、会員になれば服を借りることができるのだ。最も古いクロージング・ライブラリーである「Vaatelainaamo(ヴァータレナモ)」はヘルシンキにあり、新しくできた他の2つはフィンランド第2の都市・Tampere(タンペレ)とヘルシンキから北37kmの場所に位置する都市・Järvenpää(ヤルヴェンパー)にある。このような新しいビジネスモデルは、サステナブルな消費文化へのシフトに欠かせない。
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Vaatelainaamo(Photographer: Hertta Päivärinta)
多様なメソッドでサステナブルシーンを切り開くフィンランド・ブランド
Poola Kataryna
ブランドならばまず、フィンランドのサステナブル・ファッションを代表するブランド、「Poola Kataryna(プーラ・カタリナ)」を紹介したい。スラブ・デザインのきらびやかさとスカンジナビアの機能美を融合させた美しいデザインが特徴のブランドだ。もちろん素材調達はエシカルに行っており、オーガニック素材、端材、フィンランド産のカバ材などを用いてフィンランドとエストニアで生産を行っている。
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Poola Kataryna (Photographer: Maija Astikainen)
NURMI
次に、首都ヘルシンキから130キロ北のLahti(ラハティ)に拠点を置く「Nurmi(ヌルミ)」は、トレンドに左右されないずっと着られる服を提案するブランドだ。ヘンプやリサイクルコットン、オーガニックコットンのほか、端材などを使用し、サプライチェーンの透明性を保障する。
2014-2015AWコレクションでは、Pure Waste Textiles社製の100%リサイクルコットンを使用したジーンズをリリースする。フィンランドの企業であるこの「Pure Waste Textile社は、その社名のとおり100%リサイクル素材のみを使用するテキスタイルメーカーで、使用後のゴミのみを使用してデニム生地を初めて開発した革命的な存在である。100%廃棄物を活用する生地というのは、間違いなく未来に必要なテキスタイルだ。
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Nurmi(Photographer: Antti Ahtiluoto)
Sanna Rinne
小規模レーベルならば、フィンランドのアパレル工場の端材を回収して使用することが多い。その中でも特筆すべき「Sanna Rinne(サンナ・リンネ)」は、回収した端材を全く新しい手触りの生地に作り変えるという革命的なアップサイクル技術を開発した。
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Sanna Rinne(Photographer: Viivi Huuska)
Roots Cultural Movement
「Roots Cultural Movement(ルーツ・カルチュラル・ムーブメント)」も目立つ存在で、同ブランドはヘンプやオーガニックコットンを使用したストリート系アイテムを展開している。ブランドでありながら、バルト海に面するフィンランド南西部の町・Turku(トゥルク)にショップを持っており、他のフィンランドのサステナブル・ブランドのアイテムも揃えている。
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Roots Cultural Movement( Photographer: Essi Orpana)
Saana ja Olli
フィンランドのムードをたっぷり詰め込んだセンスの良いテキスタイルデザインで光るのは、「Saana ja Olli(サーナ・ヤ・オッリ)」。同じくTurku出身のカップルが生み出すテキスタイルは、タイムレスなヘンプ生地のうえにグラフィックプリントを施しているもの。
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Saana ja Olli(Photographer: Unto Rautio)
気軽に取り入れるためには大事! ショップや雑誌も増加中
フィンランドでは現在、小規模のものながらもサステナビリティを意識したショップが増えつつある。その中でも最も規模が大きくセンスの良いセレクトショップが「Nudge Helsinki(ノッドゲ・ヘルシンキ)」だ。また、「Weecos(ヴェーコス)」というオンライン・マーケットプレイスでは、サステナブルなスモール・レーベルのアイテムが幅広く揃っている。
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Nudge(Photographer Sampsa Pärnänen)
また、フィンランドのライフスタイル誌「Huili(ホイリ)」もサステナビリティの面で注目を集めている。フレッシュでモダンなレイアウトで、サステナブルな生活、食、エネルギー、本からもちろんファッションまで興味深い記事を多数掲載している。
このようにブランドやショップがたくさん生まれつつあるフィンランドでは、各プレーヤーが手を取り合って協力し合いながらサステナビリティを推進している。フィンランドのサステナブル・ファッションの未来は明るいだろう。