長らくヴィンテージの衣服と写真に没頭してきたSophia Amorusoは、服を売るために必要なこと、というのを理解していた。一枚の服に惚れさせるには、その背景のストーリーを伝えることが肝心である、と。スタイリスト、フォトグラファー、モデルたちが力を合わせて作っているのは、そのストーリーを伝えるためのファンタジーなのだ、と。
それが60年代の鹿革のフリンジジャケットであろうと、70sのハイパープラットフォームシューズであろうと、80sのキラキラスパンコールドレスであろうと。彼らが紡ぐファンタジーこそが、「どうしてもこの服が欲しい」と読者をたぶらかすのだと。
Amorusoが運営するヴィンテージ品のオンラインショップ「Nasty Gal」は、一面に並んだ楽しいコーディネートに思わず見入ってしまい、まんまと罠にかかって欲しくなってしまうのだ。彼女がスタイリングの参考にしているのは、ジャズミュージシャンのMiles Davisの妻、Betty Davis。Amorusoが、「真のビッチ・スタイル」と形容する人だ。
当初は大手オークションサイト・Ebayで販売を始めたが、1年半後には自身のウェブサイトを開設。自らスリフトショップを巡って集めた古い宝物を販売した。瞬く間に成長し、現在では110名のスタッフを抱え、3年で11,200%売上増という驚異的な数字を達成した。今も彼女自身がスタイリングから撮影、発送も手がける。
Amorusoはこのように話す。「ただの一枚のヴィンテージアイテムを、『どうしても欲しいもの』にしてしまうのは、それは女の子が着ているから。その女の子が、どうやって着ればいいのか手本を示す。『自分にもできそう』でありながら、セクシーでクールな着こなしを教えてくれるの」。オシャレのために、高級ブランドの高価な一着を着なければならない理由はないことを、彼女は理解している。プレゼンテーションが全てなのだ。
彼女のサクセスは、ソーシャルメディア上での口コミが火を付けた。27万5000人ものFacebookファン、3万5000人ものTwitterフォロワー。ショップブログのファンの数は、Twitterフォロワー以上にもなるという。お目当てはAmorusoが自身の考えを紹介する「Sophia’s Corner」だ。しかし、火のないところに煙はたたないというように、あくまで中身があればこそのサクセスだ。カラフルで明快、たくさんの写真でスタイリングを紹介し、1枚ずつ服の魅力をたっぷりと伝える。また、手厚いカスタマーサービスも後押しした。チャットで相談が可能だし、返品は無料だ。丁寧に顧客と服に向き合う姿勢が話題を呼び、今ではTerry Richardson、Hugh Lippe、Jeff Hahn、Alexandra Richards、Syd tha Kyd、Langley Hemingway、ライターのLesley Arfinといった大御所のクリエイターがコントリビューターとして力を貸している。
そしてついに、2012年にはオリジナルコレクション「Wierd Science」もデビューさせた。ただし、エコ・フレンドリーであるわけではない。「Nasty Gal」は、あくまでもヴィンテージ品の販売を行っている点においてサステナブルであると考える。しかし、その後ローンチされた「After Party Vintage」というコレクションは、ヴィンテージの生地を用いて製作されているラインだ。Betty Milesもきっと気に入るだろう。
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