最先端が集うニューヨークでファッションを通じた温故知新 〜「Soham Dave」

A Picture of $name Shiho Hasegawa 2013. 12. 25

新たなテクノロジーが賞賛される現代。しかし、新しいことだけがすばらしいのでしょうか? 現在、最先端のモノやヒトが集まるニューヨークで、古くから伝わるインドの伝統技術をふんだんに取り入れたブランド「Soham Dave(ソハム・デイブ)」が注目を集めています。「Soham Dave」のすばらしいところは、伝統的な技術を取り入れるだけでなく、デザインがスタイリッシュでニューヨークにおいても評価されつつあるというところ。今回は、温故知新という言葉がまさしくぴったりな「Soham Dave」のマネージャー・Nimet Degirmenciogluさんにお話を伺いました。

Soham Daveマネージャー・Nimet Degirmenciogluさん

Soham Daveマネージャー・Nimet Degirmenciogluさん

二人三脚でニューヨークに挑戦

―― ブランドを立ち上げたきっかけは何ですか?
私もデザイナーのSohamも、もともとは別の仕事をしていたのですが、自分のブランドを立ち上げたくて、ファッション工科大学のグローバルファッションマネジメント学部で学んでいました。あるとき彼のポートフォリオを見る機会があったのですが、彼のデザインはインドの伝統技術を現代のファッションにうまく取り込んでいて、とても美しくて感動しました。そこで私はぜひ一緒にブランドを立ち上げたいと思い、彼に声をかけたのです。現在、デザイナーのSohamはインドでデザインと生産をし、私はニューヨークでマーケティングとセールスを行っています。

―― インドにいるデザイナーのSohamさんとニューヨークにいるNimetさんが一緒にブランドを運営していくうえでたいへんなことはありますか?
やはり、物理的に離れているので、コミュニケーションをとっていくのが難しいですね。だからお互いをしっかり理解することをとても大事にしています。ブランドも私たちもまだまだ成長過程なので、つねに一緒に学んでいく姿勢も大切なことだと思っています。

―― なぜニューヨークで展開しているのでしょうか?
ロサンゼルスやパリなどでトレードショーに参加したこともあるのですが、実はニューヨークよりも良い反応をいただけました。特にロサンゼルスは、ライフスタイルを大切にする場所なので、サステナビリティやエシカルに対する興味も高いのです。一方、ニューヨークは人種・出身国がばらばらで多様性溢れる場所なので、市場としてはとても難しい場所です。サステナビリティやエシカルに対する関心もロサンゼルスなどと比べて高いわけではありません。しかし、ニューヨークでビジネスが成功すれば世界中どこでもやっていけると思うので、あえて挑戦しています。

もう一つニューヨークでたいへんだと思うのは、バイヤーの方へのアピールの難しさです。ニューヨークはファッション業界の競争も激しく、何をするにもお金が掛かります。直接お店を訪問して私たちの商品を見てもらっているのですが、とても時間がかかるのです。一方、トレードショーはたくさんのバイヤーの方に見ていただけるので効果的なアプローチですが、やはり出店するにもかなりのお金が掛かってしまいます。だからトレードショーに出展する際は、複数のブランドとスペースや作業をシェアすることでコストを削減し、助け合いながらやりくりしています。

伝統技術を継承しながら雇用を創出

―― 女性のアントレプレナーを支援していると聞いたのですが、具体的にはどのように支援しているのでしょうか?
インドで女性の職人としてのスキル向上を支援し、村に雇用と技術の習得を促す活動を行っています。まず、デザイナーのSohamが村でワークショップを開き、参加した人全員に刺繍などの技術を教えます。参加した人の中から1名にリーダーになってもらい、Sohamと一緒に仕事をしてもらいます。仕事をしながら、彼女はさまざまな技術を習得していきます。そうすれば、彼女は村にその技術を持ち帰ってその他の人に技術を伝えられることができます。つまり、リーダーの方を職人としての育成しながら、村の人々に技術の習得と雇用をもたらすことができるのです。

女性の職人さんによる細かく繊細な刺繍が施されています

女性の職人さんによる細かく繊細な刺繍が施されています

インド古来の伝統技術は「恵み」

―― なぜエシカルなブランドにしようと思ったのでしょうか?
それは、インドで洋服を生産するにあたって、とても自然なことなんです。インドの伝統技術や伝統工芸を用いると、おのずとエシカルなしくみになっていきます。例えばインドの伝統技術の染めは、全て野菜などの天然素材が原料なので、環境にもダメージが少ないです。インドの伝統技術についてはこちらの動画が分かりやすいと思いますので、ぜひご覧ください。

こちら(写真左)は「Ajrak」と呼ばれる染め方です。染色を行う前に、後からプリントを施したい部分に防染剤を塗っておきます。ベースの色が染まった後、ハンドブロックプリンティング(※木製のブロックによって柄をプリントする手法)で、先ほど防染剤によって染めずに残しておいた部分に色や柄を加えていきます。手間は掛かりますが、そのぶん美しく仕上がります。

(左)Ajrakプリントのファブリック、(右)ハンドブロックプリントのバッグ

(左)Ajrakプリントのファブリック、(右)ハンドブロックプリントのバッグ

また本来、ハンドブロックプリンティングを行う際は、プリントした後にブロックに残った染料を拭き取らなければなりません。しかし、ブロックについた染料を無駄にせず、もう一度コットンにプリントすることで新たなファブリックを生み出しています。こちらのバッグはそのファブリックを使用したもので、何重にも重なったプリントがほど良い風合いを出しており、バッグの中では一番売れ行きが良いですね。

―― インドの伝統技術や素材を使っていく中でたいへんだったことや苦労したことはありますか?
インドの伝統技術や素材を使っていく中で苦労したことはありませんね。むしろ、それらは美しく、インスピレーションをくれるものなので、私たちを助けてくれています。ブランドには欠かせない存在で、インドの伝統技術や素材は「恵み」ですね。

Courtesy of Soham Dave, Photographed by Romeo Lee

Courtesy of Soham Dave, Photographed by Romeo Lee

(インタビューここまで)

伝統技術が美しいと言われても、現代のスタイルにフィットしていなければその美しさに気づくことは難しいかもしれません。「Soham Dave」は、私たちに伝統技術スタイリッシュなファッションを通して美しさを教えてくれます。実際に「Soham Dave」の洋服やバッグを手に取ってみると、刺繍や染め物、縫製に至るまで繊細で美しく、ただただ感動するものばかりでした。そして、「伝統技術を取り入れることは難しいことではない。むしろ、私たちを助けてくれるものなのだ」と言い切る「Soham Dave」の強さを感じました。

日本からのオーダーも受け付けているそうなので、みなさんもぜひ公式サイトをチェックしてみてください。

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