【連載】Ethical Girl's Style in N.Y.【全7回】

Made in U.S.A. はエシカル?

A Picture of $name Shiho Hasegawa 2013. 11. 21

shiho初めまして! ニューヨークから長谷川詩穂です。現在私は、マンハッタン市内にあるFashion Institute of Technologyという学校で、広告とジャーナリズムを勉強しています。授業は進むスピードが早く、課題もたくさんあってついていくのに精一杯ですが、とってもおしゃれで個性的な学生がいっぱい。彼・彼女たちのスタイルを見ているだけでもわくわくします。人種も国籍もさまざまな人が集まってくるこのN.Y.で、私の感じたリアルなN.Y.エシカル情報をお届けします! これからどうぞよろしくお願いします!

「ごちゃまぜ」なニューヨーク

ニューヨークは人種のるつぼといわれるくらい、全てが「ごちゃまぜ」な街です。街を歩けばさまざまな人種、言語、文化で溢れています。特に南アメリカからの移民の方が多く、現在ニューヨークの中では英語を話す人よりもスペイン語を話す人の方が多いのだとか。ミッドタウンには韓国系のお店が集まる「コリアンタウン」、ダウンタウンにはイタリアンレストランが建ち並ぶ「リトルイタリー」などもあります。私が住んでいる地域は、住人のほとんどが中国人。スーパーマーケットやデリも中国人が営む店が多く、日本ではなかなかお目にかかれないような奇抜な色のフルーツや魚介類も売っていたりします。こんなに狭い街で、さまざまな国の文化が垣間見られるのはとてもおもしろいです。

〈写真左〉タイムズスクエア周辺、〈写真中央〉コリアンタウン、〈写真右〉エンパイアステートビルディング周辺

〈写真左〉タイムズスクエア周辺、〈写真中央〉コリアンタウン、〈写真右〉エンパイアステートビルディング周辺

ファッションも、この街の中に全てが揃っています。ラグジュアリーなブランドはもちろん、ファストファッションもニューヨーク中に立ち並び、そうかと思えばブルックリンにはヴィンテージショップやこじんまりしたセレクトショップも。私はブルックリンでショッピングをするのが好きで週末によく通っています。特にマーケットの「Artists&Flea」は、ヴィンテージやハンドメイドのお店がたくさん揃っていておすすめです。エシカルファッションブランドも数多く存在しており、インドやアフリカの伝統的な技術を生かしたブランドだったり、ゴミを全く出さないデザインで洋服を作っていたりと、ニューヨークらしく多種多様なものが見つかります。

〈写真左〉ブルックリンで壁に絵を描いていたアーティスト、〈写真中央〉ブルックリンの町並み(ヴィンテージショップ)

〈写真左〉ブルックリンで壁に絵を描いていたアーティスト、〈写真中央〉ブルックリンの町並み(ヴィンテージショップ)


Made in U.S.A.はエシカルか?

F.I.T.にはなんと、エシカルファッションに関する講義もあり、希望すれば受けられるんです。私もさっそく受講していて、エシカルとは何なのか? エシカルな素材ってどんなもの? サステイナブルなデザインとは?……などを講義の中で学んでいます。

先日、その中の一つであるMaterials & Eco-Labelsという授業の中で、教授とゲストスピーカーが、「Made in U.S.A.はエシカルか?」というテーマで議論になりました。「Made in U.S.A.」の是非は、アメリカ国内でも頻繁に取り上げられている問題で、2012年に行われたオリンピックの際にラルフローレンのプロデュースしたアメリカ選手のユニフォームが実は中国製だった、というのはみなさんの記憶に新しいかもしれません。現在アメリカでは「American Apparel(アメリカン・アパレル)」など「Made in U.S.A.」にこだわるブランドがある一方で、海外に生産を頼っているメーカーが圧倒的に多いのが現実です。

初めのうちは、教授とゲストスピーカーそれぞれが意見を述べるだけでした。しかし、だんだんと議論は白熱。教授は「アメリカで生産すれば国内の雇用が増える。それに加え輸送の費用も少なく、CO2排出量も抑えられる」と主張。それに対しゲストスピーカーは「現在アメリカはスキルもスケールも中国などアジアの地域には及ばないし、キャパシティーもないので、Made in U.S.A.を推進する必要はない」と言います。生産拠点をアメリカに移そうとするメーカーもあるのですが、人材不足から生産が追いつかないという現実に直面しているそうです(参考:「復活なるか!?メイド・イン・アメリカ」NHK、2013/4/1)。

最終的に、教授とゲストスピーカーの意見が一致することはありませんでした。確かにアメリカ人にとって、「Made in U.S.A.」を大切にするのは愛国心の表れでもありますし、アメリカ国内の雇用も生み出します。しかし、中国などアジアの人たちにとっても、工場での雇用は大切なものです。また環境の面から考えてみても、どちらが正しいとは言いがたいでしょう。アメリカで全てを生産しようと思うと新たな設備や工場が必要になり環境に良くはないですが、その一方でアジアに生産を頼るだと、輸送の際に排出するCO2が環境に与えるダメージは大きいですよね。加えて現在アジアにあるアパレル工場の労働環境は劣悪である場合が多く、「エシカル」とは言いがたいもの。そう考えていくと、「あれ、そもそもエシカルって何だっけ?」というものすごく根本的な疑問が、私の中で湧いてきました。

できることから始めたい

もしかしたら、エシカルファッションに答えなんてないのかもしれません。ある一面からみると正しいことだけど、違う側面からみたら正しくない……そんな矛盾がきっとたくさんあると思います。

でも答えがないからこそ、いまのファッション業界の現状を知って、一生懸命考えて少しずつ自分のできることから始めていきたいです。だってファッションってもともと人を笑顔にするものですもんね! エシカルファッションを通して笑顔になる人が世界中で増えると良いなあ……そんなことを考えつつ、ニューヨークのエシカル事情をお伝えしていきます。少しでも皆さんがエシカルファッションを知ったり考えたりするきっかけになれたら嬉しいです!どうぞよろしくお願いします♪

ロングアイランドシティから見たマンハッタン

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