アッシュ・ペー・フランス株式会社主催の、9月11日から3日間開催されている展示会「rooms27」。国立代々木競技場第一体育館を会場に、過去最多の660ブランドが出展。今年新設の地球や環境、社会に配慮したブランドを編集するエシカルエリアには、33社が登場。9月11日(水)、エシカルエリア出展者から業界を牽引する代表者の方々によるトークイベントが開催された。
SESSION1. MOTHERHOUSE
第1部となるSESSION1では、株式会社マザーハウスの代表取締役兼デザイナー 山口絵理子氏、取締役副社長 山崎大祐氏が登場。同社の取り組みについてほか、今後の予定やエシカルについての考えなどを紹介した。
直営店にこだわり、国内11店舗・海外4店舗を展開する同社は、間違いなくエシカルをリードする企業だが、2006年に設立した同社から見ると、エシカルという言葉が盛り上がり始めたのは「バングラデシュにずっと滞在して、日本に帰ってきた後(山口氏)」。エシカルという言葉にとらわれることなく前進してきた同社が今回エシカルエリアに出展した理由は、「さまざまな企業とコラボレーションして学ばせていただきたい」。同社が今年8月に販売開始したcocokara(ココカラ)シリーズを例に挙げ、今後の目標を説明した。ココカラシリーズは、がん患者の就労支援を行う「キャンサー・ソリューションズ」(桜井なおみ社長)と共同開発した低反発のクッション入りのショルダーストラップを採用したバッグシリーズ。軽くてやわらかいレザーを使用し、乳がん患者の体への負担が少ない仕様に仕上げている。
乳がんは年間6万人が罹患しており、患者数は年々増加しているが、患者が持つファッションに対する悩みはあまり知られていない。2012年にキャンサー・ソリューションズが行った400人を対象にした調査によれば、9割がバッグ選びに困っているという。同社は、複数名の乳がん経験者にヒアリングをし、その悩みを洗い出し解決を図った。「乳がんというのは人口全体から見るとマイノリティマーケットだが、確実に困っている方はいる。その取りこぼされてきたニーズをすくうことが、マザーハウスがものづくりを行う意味だと思っている」と、山崎氏は説明。「ものづくりを小ロットで回していけるのがマザーハウスの強み。それで解決できる可能性がある悩みに挑戦していければ、マザーハウスの存在意義があると感じている。だからどんどんニーズを相談してほしい」と今後の意欲を表した。
山口氏は、このように語る。「何がたいへんかというと、信頼関係が一番。そんな中で感じたのは、私自身が力をつけていかなければいけない、ということ。エシカルである、社会性があるという言葉じゃ信頼関係は作れない。現地の工場のみんなにとっては来月のオーダーがいくつあるのか? が最大の問題。そこにちゃんとこたえていくこと。売っていく、お客さまの数を増やすことで初めて工員との信頼に結びつく。企業として一歩進むということが工場を作ることにつながっていくんだと思っています。バッグを一つを売って初めて一人の工員を雇えるというのを実感している以上、思いだけじゃ続かないと思っています」。
SESSION2. PATAGONIA×PEOPLE TREE
続いて第2部となるSESSION2では、パタゴニア日本支社支社長 辻井隆行氏、(右)ピープル・ツリー/グローバル・ヴィレッジ代表 サフィア ミニー氏が登場。フリーアナウンサーの末吉里花氏の進行の下、対談形式でエシカルを進める意義を考えた。
まず、エシカルファッションとはどのように定義するか? という問いに対し、サフィア ミニー氏は、「20年前から変わっていないのが、作っている人と環境への負担をなるべく軽くする新しいビジネスモデルであるということ。デザインと質で長持ちするものを作るということ。エシカルとは、本当に幅広いものだと思う」と回答。手法という点からの回答に対し、辻井氏はマインド的な観点から「もともとパタゴニアは、アウトドア好きのスタッフが自然の中にいて『前に来たときと様子が違う』ということに気づいたことから環境に関心が向いたという経緯がある。マインドという点で考えると、人のことを大切にしない人が環境のことを大切にできるわけがない。(エシカルの)根底は、おもいやりとか周囲のモノやコトをきちんと考える姿勢というのではないかと考えている」と回答した。
新しいフェアトレード認証システムについて話が及ぶと、商品力の重要性に言及。「新しいフェアトレード認証システムができたことで今後は、加工された商品にフェアトレードのマークを付けられる(→新しい認証システムについてはコチラ)。商品を通じてフェアトレードの意義を説明できることが強みになる。良い商品を作っていく意義も強まる」とミニー氏が説明。辻井氏も、「商品が窓になるのは、パタゴニアも同様。入り口としての順番は、先に商品がある。商品の質が良ければ、その後知ったことの重みも変わってくると実感している」と話した。
ミニー氏が、「良い商品を作ろうと思うと、失敗品も多く出てくる。その失敗品のミュージアム、展示会を一回してみたいと思っている」とアイディアを話すと、「いいですね!」と辻井氏も賛同。「失敗といえば、プリントに失敗して8000万円分のロスとなりそうなトートバッグがあり、セカンドハンドショップのPASS THE BATONに相談した。すると何回も染め直してポケットを付けるなどカスタマイズして、パタゴニアで売るより高い値段で売れていた。しかも、一日50枚も売れたというからこちらも驚いた。失敗したことをシェアするのは大事だ」。
末吉氏も「PASS THE BATON」の遠山社長も、『最初からこのデザインは思いつかない。失敗があって、そこにアイディアを組み合わせるコラボレーションがあったことで、このデザインが生まれることができた』とおっしゃっていた。エシカルはなかなか広がりにくいので、コラボレーションをしてオープンに取り組みをしていくことは大切だ」と締めくくった。
トライ・アンド・エラーを重ねながら何がベストか? をそれぞれ探りながら前進している3社の話から、エシカルの道は実にさまざまであることがあらためてうかがえる。それぞれのやり方でエシカルを追求するブランドが多数集まったエシカルエリアは、広くエシカルを伝えるだけでなく、エシカルな道を探る者どうしがオープンに見せ合うことで、新たなクリエーションが生まれる可能性もある場だ。ここから、さらなる問いや答えが見つかるに違いない。
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