エシカルファッションの歴史は、1990年に誕生したともいわれるが、それは世界初のスウェットショップについての摘発が行われたからだ。以来、ファッションに関する悲惨なニュースは後が絶えないが、悪いニュースばかりでもない。エシカルファッションに関するキャンペーンは世界中あちこちで行われているが、成功しているものもあり、それはすなわち進歩の証だ。
The Guardianに掲載された、Ethical Consumer誌のBryony Mooreによる記事では、さまざまなキャンペーンを取り上げながら何が改善され、何をこれから改善していくべきかが記されていた。紹介されていたキャンペーンを見てみよう。
児童労働
Responsible Sourcing Networkによるキャンペーンでは、ウズベキスタンのコットン農場での児童労働撤廃が訴えられた。ウズベキスタン政府は、毎年100万人以上の児童をコットン農場での労働に追いやっている。秋になると、政府は学校を閉鎖し、児童や先生にその環境を作っているのだ。
このキャンペーンは、60カ国以上で行われ、結果「Adidas」や「H&M」が児童労働がなくなるまでウズベキスタンでのコットン調達を取りやめることを決断した。
『殺し屋』ジーンズ
The Clean Clothes CampaignによるKiller Jeansキャンペーンは、世間にサンドブラスト加工の危険性を強く知らしめた。ダメージ加工を施すために、どんな危険があるのか。正確な統計はないものの、サンドブラスト加工による被害は非常に高いとされている。古い機械の使用、マスクや防護服のないまま12時間以上も悪い空気にさらされるという不適切な労働環境により肺がダメージを受け、労働者は止まらない咳や呼吸困難に苦しんでいることが明らかになっている。現在、「Levi’s」や「H&M」といった企業が、サンドブラスト加工について廃止し、その他企業も見直しを約束している。
毒性の高い染め
環境保全NGO・Greenpeaceによって、アパレル産業がいかに汚染されているかが摘発された。2011年より、Greenpeaceはファッションの「デトックス」を訴え、その署名を募っている。Greenpeaceは、Adidas、Nike、Puma、H&M、ユニクロなどと取引実績のある繊維加工工場の排水から、ホルモンの働きを阻害するような毒性の高い薬物が検出され、工場周辺の水質環境の悪化が進んでいることを指摘している。また、生産過程で使用されたと思われる有害化学物質が衣服にも残っている現状も指摘。企業がサプライチェーン全体を通して有害な化学物質の使用を監視・削減しながら、最終的には、排出ゼロを目指すべきとしている。
現在、PUMA、Mango、Levi’s、Zara、Uniqloといった多国籍企業が、毒性の高い薬品の使用停止に踏み切り、工場周辺の環境への配慮を約束した。
健康と安全
バングラデシュのアパレル工場ビル倒壊事件は、多くの人を突き動かした。Bangladesh Safety Accord(バングラデシュ安全協定)への書名キャンペーンが行われ、100万筆以上の調印を求める署名が集まった。
倒壊事故で亡くなった人たち、そしてその残された人たちのことを想像してみよう。稼ぎ手を失った家庭の収入はどうなってしまうのか? ビルに入っていた工場と契約していたBenetton、Bonmarché、Mangoといった多国籍企業は、その力はあっても補償などはしないという。しかし、現実と向き合うことにした多国籍小売企業も出てきたようだ。Tescos、Zara、H&M、Primark、日本ではUniqloを始めとする多くの企業が、Bangladesh Safety Accordに調印した。これは、独立した安全点検を実施し公的な報告書を作成すること、必要な修理や改修の実施、ブランドと小売業者はそれらにかかる費用を負担する責任、必要とされる安全性の向上を受け入れない工場と契約を打ち切る義務、そして労働者や労働組合のために果たすべき大きな役割があること。この協定の中心となるのは、バングラデシュの工場の安全基準を守るためにかかる改修や修理費用の支払いに企業が責任をもつことなどを約束するものである。
キャンペーンの成功は、一般市民の声の反映でもある。一人ひとりの力は小さくとも、集まれば大きな力になりうる。日本では、「変えたい」を形にするソーシャルプラットフォーム Change.orgから、さまざまなキャンペーンに参加できる。