フィリピンのママたちとともに。ママ起業家によるフェアトレードアクセサリーブランド「Feliz」

A Picture of $name HITOMI ITO 2013. 2. 1

フィリピン共和国マニラ首都圏ケソン市にあるパヤタス地区。そこには、ケソン市のゴミ集積場があり、毎日数千トンのゴミが運び込まれています。その集積場の周辺には約1万人の低所得者層が居住しており、住民の2~3割の人々は、リサイクルできる資源を換金することで生計を立てている「スカベンジャー」と呼ばれる人々です。

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学歴が低く、特別な技術も持っていないために定職に就くことが困難……という方々がほとんど。アクセサリーブランド「Feliz」は、その地区に住むママたちにアクセサリーづくりを指導・製作してもらうことで、仕事を生み出しているブランドです。アクセサリー製作を通じてママたちが技術を習得し、自分でオリジナルのアクセサリー製作販売やオーダーをいただけるような自立を促進しています。

「子どもたちの教育の機会が増えること、一生懸命働く親の姿を子どもに見せられることを目指しています」と語る代表で設立者の柿本可奈子さん。母としてがんばる柿本さんに、ブランド設立までのストーリーといまの思いを語っていただきました。

「Feliz」設立まで

―― 「Feliz」のアイテムはどんな方々が作っておられるのでしょう?
「Feliz」の提携先であるNPO ソルトが12年前に創設したクロスステッチを行うグループ「Likha」(リカ)。そのメンバーのうち、アクセサリー作りに興味のあるママたちといっしょに「ぺルラ」というグループを作り、アクセサリー製作をお願いしています。

ソルト奨学生ママの世帯には、父親が収入が不安定な仕事をしていたりまたは働いたお金を自分だけが使い込んだりする方、または夫が亡くなってしまってシングルマザーの家庭もあります。そのため、子供たちが学校に通うことが難しいという状況になっています。

―― 「Feliz」はどういう思いから始められたのでしょう?
世界の子どもたちがどこに産まれようと夢や希望を持ち、それを叶えることができるように教育を受ける機会を増やす活動をしたいと思っていました。そのためにはどうしたらよいか模索する中で、ソルトに出合い、いまに至っています。「Feliz」では、関わったママさんがたがその後自分たちで仕事を生み出していけるよう、また少しでも多い収益につながるよう、現地で商品を製作して頂き完成したものを購入しています。

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―― そう思うようになった具体的なきっかけなどがあったのでしょうか?
いろいろあるのですが、一つは私が子どもをなかなか授からなかった経験から子どもが生まれるのって奇跡でとても尊いことだと強く感じるようになりました。せっかく何か意味があってこの世に生を受けた子どもたちが、生まれた国や家庭の状況や性別によって自分らしく生きられなかったり、最低限の人権も守られない生活を強いられることについて憤りを感じられずにいられませんでした。

―― なぜ、フィリピンだったのでしょう?
2010年10月に初めてフィリピンを訪れ、第1回目のワークショップを行いました。フィリピンで活動する! と初めから思っていたのではなかったのですが、いまのような活動をしたいと考え始めたときにフィリピンのNPOソルトの事業の一つ「Likha」というお母さんグループを紹介していただきました。そのグループがまさに私がいっしょに活動したいと描いていたグループだったので、お願いしました。

母として

―― 「Feliz」を始める前はどんな仕事をされていたのですか?
まず保健師として地方の街の市役所で働いていたのですが、5年ほどたったときにアロマセラピーの資格を取りに渡英しました。帰国して結婚してからは、アロマセラピストとしてサロンワークや講師活動を行っていたのですが、第1子の妊娠を機に専業主婦になりました。

第2子目を諦めた頃、子どもが通っていた公文で採点のアルバイトを始めて、その収入5千円でチャイルドスポンサーを始めました。その頃から趣味でアクセサリー作りを始め、徐々にアクセサリーの販売やデザイン提供の機会をいただくようになりました。そしてこのアクセサリーの仕事とチャイルドスポンサー的なことを合わせた取り組みはできないか? と考えるようになったときに、フェアトレードやエシカルという言葉に出合いました。それから本気で事業としていこうと思って、女性起業塾に入りました。2011年6月に「Feliz」を立ち上げました。

―― ご家族のご理解はすんなりいただけましたか? 反対であったり、難色を示されたりとかはなかったですか?
実はちゃんと説明したり理解を得てから始めたわけではないんです。いろいろ始めてから「何してるの?」と聞かれて、少しずつ小出しに説明してきたという感じです。夫は、私のブログを会社の人から聞いて読んだらしく「こんなことしてるんだ」という感じだったのかもしれません。私の頑固な性格を知っているので 言っても辞めないと分かっているので見守ってくれています、多分(笑)。

息子はいま、12歳の中学1年生です。とても応援してくれていますが、夜の外出や帰宅が遅くなることが多いと嫌なようです。だから夜開催のセミナーや会合にはあまり参加できないところですね。

はっきり言って、家庭と仕事は両立できていません。寛大な心を持つ夫と息子に感謝しています。だから「ありがとう」という感謝の気持ちと、「ごめんね」という気持ちも両方伝えるようにしています。

ママたちと一緒に。右端 柿本可奈子さん。

―― お一人でやってこられましたが、めげそうな気持ちになるときはどんなときでしょう。
仕事や家事が立て込んでうまくオーガナイズできず、一人であたふたしてしまうときですね。でもきっと、時間が解決してくれることだと思っています。

―― ではどんなときにやる気に燃えますか?
嬉しいのは、フィリピンのお母さんたちが一生懸命アクセサリー作りを学んで下さっているときや、お客様が購入して下さったことを伝えてとても喜んでいるときですね。お客さまが商品を気に入って下さって喜んでおられる様子を見るときも、Happyがつながっている感じでとてもうれしいです。

「Feliz」のこれから~困難を「らしさ」に

―― 現在の課題はなんですか? どんなふうに乗り越えていきたいですか?
課題だらけですが、何から何まで一人でやっているのでいろんな意味で限界がきています。他の方々の助けを借りながら進めていけたらと思っています。

現地パートナーとは、お母さんたちとビジョンやミッションをより共有して意識を高く持ってもらえるような関係になることが課題ですね。ミーティングを増やして意見交換の機会をまずはもっと増やしていきたいです。これが一番難しいです……。

また「Feliz」のミッションを遂行するために、商品を手にとって頂ける機会を増やしたいと思っています。そのためにもお客さまに喜んでいいただけるようデザインや素材の向上に努めることはもちろん、常設して頂ける場所をもっと開拓していかなくてはなりません。

―― 最後に、今後の予定や目標を教えてください。
今年は、また新たなパートナーとのお仕事もしていきたいと思っています。世界各地の方々とお仕事をして、商品を通して世界の現状を知っていただく機会となること目標としています。家庭もありながら仕事をすることは、困難なこともありますが、それを「Feliz」らしさに変えて新たな活動のかたちを作っていきたいですね。

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