Written By:Dr. Pamela Ravasio, Twitter: @PamelaRavasio, director of texSture.
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EstEthicaとは、ロンドン・ファッション・ウィーク(LFW)中に開催されるエシカルファッションブランドの展示会である。今年で開催6年を迎え、2012年9月は15のブランドを紹介した。
スポンサー不在。だけど……
2月開催分に比べると、より見どころが多く、見応えがあるのがLFWの9月開催分である。端的に言えば、2月より9月のほうがエンターテインメント性に富み、知見を深められる。今年はスポンサーが欠け(※これまではMonsoon社がスポンサーを務めていた)たが、それは、EstEthicaのキュレーションに驚くほどわかりやすく影響した。Monsoonのターゲット層は若いファストファッションを購入するような層であるが、同社の持つイメージはEstEthicaに出展するようなデザイナーにとっては、あまりイメージアップにつながらないものと思われる。スポンサーがいなかったのは、逆に展示全体の品質を向上させたように思う。
もっと言うと、今回のEstEthicaはこれまでで一番良かったと言えるのではないだろうか。エシカルファッション関連のニュースでも、このことを示すかのように、良い評判がニュースで流れている。アパレル産業の成長が回復しつつあることの影響か、はたまた「それでもショー(そしてビジネス)を続けなければいけない」という意味を内包するものかはなんとも言えないが。
しかし「良い展示会だった」という事実は残る。エシカルなVogue’s Fashion Night Out(Studio Tammam主催)もロンドンで初めて行われただけでなく、このことはエシカルファッションの前進を示すものだと思う。EstEthicaと同時に開催されたEcoLuxeも、会場は良い雰囲気を保っていた。これは希望を感じられる動きだ。まさに、EstEthicaに出展していた先人たち、「Christopher Raeburn」や「Noki」が、自身のデザインの主要なエッセンスを失わずにファッションのメインストリームに無事着地したような動きが期待できる気がしてくる。
EstEthica 2012年9月の新登場ブランド
展示会で最も興味深いものといえば、もちろん新たに出展するブランドに出合えることだ。LFW・EstEthicaのウェブサイトに掲載されている順に、新登場のブランドを紹介しよう。
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Via: REWARDROBE
Honest by Bruno Pieters
このブランドが現在シーンで最も注目すべきブランドだろう。ファッションについて知ってると思っていたことがどれほど当たっているか、答え合わせをしてみてはいかがだろうか。まず、彼らのウェブサイトにアクセスしてみよう。生産にかかるこれほどまでに多くの情報が網羅されているのには感銘を受けるはずだ。ウールジャケットがどこの牧場で暮らしていたかを知りたいなら、このブランドから買うと良い。生産過程のプロセス一つ一つが明らかになっている。工場の名前から住所まで。そして、素材情報、生産の詳細、原価計算、カーボンフットプリントのいずれかが明記されている。原価計算までが明記されているのはすごい! 間違いなく、このブランドは最も先見性があり、そういったブランドを見つけるのは久方ぶりである。
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Via: REWARDROBE
Mich Dulce
このブランドについては、短い言葉で多くのことを説明できる。「善い」ビジネスでヘッドウェアを展開するブランドだ。デザイナーは希少な繊維素材に高い関心を持っているが、特に関心を示しているのは「Pinha(パイナップル)」。この素材が同ブランドのアイテムを興味深いものにしている。
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Via: REWARDROBE
Auria X Margot Bowman
リサイクルポリアミドから生産された水着を展開する。ポーツマスで製造されている。スポーツ用でも着用可能だが、非常に個性的なので目立つこと間違いない。
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Via: REWARDROBE
Carla Fernandez
メキシコ中の土着のコミュニティと提携し、彼らからインスピレーションを受けてアクセサリー類を作っているブランド。デザイナーの手法はとてもユニークで、「デザイン・ヴァン」、デザイン・ラボを兼ねたヴァンに乗ってメキシコ中のローカルコミュニティを訪ね回るのである。そして、彼らに協働を依頼する。古来からの伝統的な技術を現代的なものに昇華させ、掛けあわせたりしながらデザインの冒険を繰り返している。
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Via: REWARDROBE
Lorico
このブランドもPinha繊維に情熱を注いでいる。このブランドの服はほぼPinha混のコットンだ。同ブランドのデザイナーの故郷、マニラには多く自生している。デザイナーのJerome氏は、Pinha繊維が国際的に認められることを目指し、活動している。
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Via: REWARDROBE
Victim Fashion Street
このブランドは他のEstEthicaデザイナーと比べると「仲間はずれ」である。私が思うに、Nokiの伝統を守っているように感じる。つまり、グランジでワイルド、そしてパンク。他のブランドと異なっているのは確かだ。
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Via: REWARDROBE
White Tent
イギリス系ポルトガルの若いレーベル。クラシックな色味を若めなストリートスタイルに仕上げている。
まとめ
ブランドの提案するスタイルを見た限り、以下の点が指摘できよう。
・デザイナーが注目している素材はPinha。Pinhaはアパレル素材としては無名に等しい繊維だが、リサイクルポリアミドやポリペーパーしかり注目されつつあるようだ。これは良いニュースで、今後アパレルにおけるサステナビリティとは、コットンおよびポリエステルの代替素材をどうするかということが主要トピックになってくるからである。
・エシカルファッションは確かに成長している。グランジテイスト、ロックテイストは影を潜めつつあり、逆にストリート系、ビジネススタイルが増えつつある。スタイルが多様化するのはいいことだ。
・エシカルファッションにおいて、アイテムの種類も増えつつある。つまり、帽子、水着、下着に関するブランドも増えつつあるということだ。
・透明性やトレーサビリティを追求する動きも活発化している。これはいずれ、消費者が物を購入する際に、十分情報を得て吟味したうえで購入を決定できるようになるということだ。
・サステナブルなファッションアイテムが高くなる必要は全くない。EcoLuxeにも出展していたYvianは、パンツなら150GBP、レディースジャケットなら250GBPで展開している。ArliもEcoLuxeに出展していたが、プライスポイントは80GBPに設定されている。Junky Stylingも手の届きやすい価格帯に設定されている。ユニクロほどでないのは明らかだが、こうした価格展開は、決して従来の価格設定と比較して「高い」ものであるとは、私は思わない。Natural Beauty Basicに代表されるような良質な衣服を展開するハイストリートブランドは、このあたりの価格を設定していたし、エシカルファッションの価格は決して高くなるわけではない。