高コンテクスト文化と低コンテクスト文化に分けられる
消費者行動、広告、セールス&マーケティングマネージメントにおける国家間における文化的な差異およびその多様性は、国際マーケティングのテーマとして幅広く研究されている。文化の違いはビジネス交渉、広告、消費者行動とマーケティングリサーチに深く関係する。学術文献や商談文書で見られるものの中で最もよく使われる手法の一つは、高コンテクスト文化と低コンテクスト文化を区別することであり、これはビジネスで共有する情報の質と量に直接影響を与える。
ここで、高コンテクスト文化と低コンテクスト文化とは、それぞれ文化の優劣を表すのではない。高コンテクスト文化とは、ある文化において、他人とコミュニケーションするのに理解していなければならない文化的背景のハードルが高い文化のことを指し、非言語的コミュニケーションに頼る部分が大きい。それは、ジェスチャーなどに限ったことでなく、歴史、伝統的・文化的背景に流れるものを含む。読み手・聞き手は相手がそれを共有していることを前提にコミュニケーションをとる。一方、低コンテクスト文化とは、他人とのコミュニケーションにおいて言葉に頼るところの大きい文化のことを指す。ここではルールが重要で、知識は広く受け入れられるものとして扱われる。
日本や韓国に比べ、イタリアやスペインは典型的な高コンテクストな国である。フランスやイギリスは両方の要素を持っているが、フランスはよりハイコンテクストな国であろうとする傾向がある。アメリカ、ドイツ、デンマーク、スウェーデンは低コンテクストな国であろう。
この差異がもたらしたものの一つは、ある種の欧州の南北格差である。その南北境界線は、エシカルファッションがどの程度スポットライトを浴び広く知られているかにおいて明確である。つまり、北欧の国々やイギリスにおいては、その議論は公の場において積極的に行われる。しかしながら南欧、とりわけイタリアやリベリア半島では、この点について議論はほとんど行われておらず、そのまま行き着くところに行くような方向にある。
ヨーロッパ・国別エシカルファッションへの取り組みの特徴
イタリア
エシカルファッション(モダ・エティカ)は、多くの消費者にとっていまだに空虚な言葉であり、既存のファッションブランドからの取り組み例は少ない。イタリアにおけるエシカルファッションとは慈善活動であるか、地方や国の職人技を保全することを目的としたローカルコミュニティへの参加として捉えられている。この後者は、イタリア国民が共通で抱える不安に呼応するものである。彼らが何を恐れているかというと、イタリアの各産地の生産力が低下していることと、伝統として培ってきたノウハウが失われつつあることである。
スペイン
この国はイタリアと共通する特徴を有している。つまり、エシカルファッションがいまだなじみのない新しい概念であることだ。そのため、スペインからは目立った共感は得られていない。エシカルファッションという言葉が何を意味するのか、この国では今のところ確立されておらず、現在多くの取り組みが「コメルシオ・フスト」(公正取引)と関連づけられている。しかし、シューズブランドの「Pikolinos」や生産の透明性に徹底的に取り組むフェアトレードブランド「IOU Project」といったファッション性に富むエシカルブランドも出てきており、他のヨーロッパ地域よりもデザイン面において先行していく可能性は見込めるだろう。
フランス
フランスのエシカルファッションが主に取り組むのはフェアトレード(commerce équitable)と「持続可能な開発(développement durable)」である。消費者の77%が、「エシカルファッション」「児童労働への反対」は重要なことだと答えており、58%が「労働者の尊厳を守ること」つまり、適切な労働環境を保障し適切な賃金を支払うことを要求している。さらにいえば、60%の消費が「不当な扱いを受けている人々のエンパワメントを支援する必要がある」とも答えている。
→*Institut Français de la Mode”Mode et consommation responsable”2010
ドイツ
ドイツの「エコ」ファッションは、ドイツファッション市場の1.4%を占め、現在ヨーロッパでは最大の規模を誇っている。ドイツのファッション市場はここ数年で急激に品質重視になってきている。国をあげて「Stiftung Warentest」(「基礎テスト済み」の意で、1964年に創設された消費商品の評価を専門に行う非営利組織)にテコ入れをしており、品質・健康・安全・環境問題がドイツ消費者の最大の関心事となっている。これは、アパレル企業の動きを見ても明らかだ。スポットライトが当たっているのは、コットンなどの天然繊維からできたエコフレンドリーな製品が多い。ただし、「ドイツ製(Made in Germany)」の活性化やドイツの職人技の保全という点については、ヨーロッパの他の地域に比較して注目が薄いようである。
デンマーク
「お手頃なラグジュアリー」というポジションに立ち、急激に成長しているデンマークのファッション市場は、多くのブランドがこれをブランド戦略の中核に位置づけるなど、環境への配慮が保障されている。「ファッション新興国」がこのように取り組むことは、エシカルなビジネスモデルを実践することが時代の先端をいくものになっていることを表しているのではないだろうか。彼らのいうエシカルには、労働問題、サプライチェーン管理、責任を持った生産といったことも内包する。さらに、他のヨーロッパ諸国と比べて特徴的なのは、動物保護についての言及が目立つことだ。しかし興味深いことに、デパートや専門店では、エシカルブランドに特化したセレクトショップでない限り、そういったマニフェストを全面的に打ち出すことはない。
スウェーデン
他のヨーロッパファッション市場と異なり、贅沢品消費を好むという伝統がない。同国のファッションは民主化されており、非常に実用的なものとして認識されている。その好例を挙げるなら、最近では「Swedish Denim Miracle」が挙げられる。消費者にとってエシカルとは「良き、価値ある市民」であることと不可分な要素として考えられている。ブランドも消費者も「スウェーデン製(Made in Sweden)」に誇りを持っており、革新的で将来を見据えた行動をとることが好まれる。「Swedish Denim Miracle」もそのような企業たらんことを宣言している。
イギリス
最後に、イギリスのファッションシーンは矛盾している。この国ほどファストファッションが広まっている国は、ヨーロッパでも他にない。しかしエシカルファッションも、政治レベルで議論されるほど取りざたされる。その結果として、各アパレル企業はその矛盾を乗り越えるための戦略を打ち出している。Marks&Spencerに代表されるようなハイストリートの大手小売店ですら環境に配慮したものづくりとサプライチェーンの透明性を公的に約束している。エシカルファッション側のアプローチとしても、権威を持つ研究機関・研究者が高等教育機関で教育を行うほどになっている。
まとめ
それぞれの国・市場で、エシカルファッションの中で優先する項目が異なる。西欧諸国それぞれにおいて、どのようにエシカルが受け止められているかは、その国の持つ歴史の影響もある。
スカンジナビア系諸国は、より統合的、先見的、なによりも事実主義的なアプローチから取り組みを進めているのに対し、他のヨーロッパ諸国は、多々あるエシカルの中の1つの要素に特化しているといえる。その中の2大トピックが「フェアトレード」と「環境」なのである。
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