唯一無二のフォルムと空気感を持つジュエリーを作るデザイナーのEmma Ware。彼女が使用する素材はタイヤ。それだけではまるで無機質そのものですが、研磨した金属を塗ってニュアンスを加えたタイヤは、Emmaの刻む繊細なカットと合わさり、羽のような温もりを感じる有機的な雰囲気のジュエリーへと生まれ変わります。
Flow Necklace（Photography and styling:Emma Ware, Graphics:David Hughes）
―― なぜタイヤを使用することを思いついたのでしょう？
こんなに物があふれている時代に、新しく物を作るのって経済的にも環境的にもあまり意味のないことだと思っていたから、すでにある素材でジュエリーを作ろうと思ったの。ある日、友人の車がパンクしたんだけど、そのときタイヤの内側を見ていて『これは切り刻んだらぜったいおもしろいものができる！』って閃いた。
昔から、壊れかけている古いジュエリーの彩り豊かでキラキラしたところが好きだった。そういうおもちゃも、ペットボトルのキャップなんかも。そういう誰も気にしないようなものが好き。すでにあるものをリメイクして作るというのは、制限がある中でどうやってデザインするか試されるから、一般的に新しいジュエリーを作るのと作り方が違う。だからいつも新しいゴミを探しているの。
―― あなたはもともと映像の仕事をしていたそうね？
Wimbledon School of Artsでは純粋美術と応用美術を専攻したわ。絵を描いたり写真を撮ったり。だけど絵を描くって一人での作業だから、やっぱり人と一緒に仕事をしたいと思って、その後Ravensbourne Collegeで放送の学位を取得したの。それからBBCでTV番組の制作の仕事を6～7年やったわ。
だけど猛烈に「手を動かしてなにか作りたい！」という衝動に駆られたの。それでジュエリーが好きだったから、ジュエリー製作をしようと思って。ジュエリーって自分が作った彫刻を身につけてもらえるところが好き。放送をやってたときは、自分が作ったものがどう受け取ってもらえてるのかよく分からなかったから。
母がジュエリー作りをしてたから、8～9歳の頃から母の道具を使って遊んでたの。だからジュエリーの学校に行ってないわ。ジュエリーをやって生活できるか分からなかったけど、とりあえず挑戦してみようと思って始めたの。人生、何があっても受け入れなければならないし。
―― あなたのジュエリーは他にはない、非常にユニークな雰囲気があるわ。どうやってデザインしているの？
基本的にデザインは、タイヤの意志に従うようにしている。いろんな切り込みを入れてみて、タイヤが織りなす自然な形を尊重するの。段階的に大きく、または小さくなるようなタイヤのパーツを作り、それに規則的な切り込みを入れることで、自然の物質をかたどったものができることに気づいたの。例えば、翼、羽、葉、貝、波……。
タイヤって無機質で冷たいと思うかもしれないけど、実は柔らかくてとても温かいの。素材のタイヤはバイク屋で入手しているんだけど、地域のありふれたバイク屋よ。いろんなところでいただいてるの。アシスタントと全てハンドメイドで製作してるわ。手ずから鋏を持ってね。
―― 今後の目標を聞かせて？
いまはイギリスを中心に、フィンランド、フランス、オーストラリアなどで販売してもらってる。若い方から60代の方まで幅広い方が買ってくれるわ。
タイヤ以外にもおもしろいことができる素材を探しているところ。特に、いまは黒っぽいものが多いし、カラフルな素材を見つけたいのよ。アセテートなんかの合繊も考えているところ。良いものがあれば手を広げていきたいわ。
Hunter Earring（Photography and styling:Emma Ware, Graphics:David Hughes）
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