両足義足でハイヒールを履くという選択 / アーティスト・片山真理さん

若手アーティストの発掘・育成を目的に開催される展覧会・アートアワード東京丸の内。若手アーティストの登竜門としてすっかり知られた存在で、今年で6回目を迎えました。2012年のグランプリは片山真理さん(24)。両足とも脛骨欠損という、主幹を成す太い骨がない病気を持って生まれ、9歳のときに切断。以来、両足が義足のアーティストです。

靴のこと

『High Heel Project』(2012年)

『10代の頃もいまも、選ぶのはだいたい黒い靴です。本当にどうにも気に入った靴で、ヒールが合わないときは、義肢製作所へ持っていって義足に合わせてもらうこともあります。ベタ足の足部は、5ミリでもかかとが高いと履けないんですよ。義足って、踏み込んでつま先で蹴り上げるっていうことができないので、かかとが滑ると全部が滑っちゃう。

『「どの洋服にも合う、歩きやすい靴」となると、コンフォートシューズしかないです。特に、東京靴流通センターのプライベートブランドのスリッポンが履きやすい。マットなブラックで、どんな服にも合わせやすくて、3年ほどリピート買いしています。でも今年になって、それが廃盤になっちゃったので、次に何を履こうか考えているところです。考えているのは、ニューバランスの紐靴。ニューバランスはもともと補装具のメーカーだったのですごく歩きやすいんですが、紐靴ってすごくめんどくさい。紐を全部ほどかないといけないんです。でも、ベルトタイプの靴だと洋服を選びますよね。ほんと、どうしよう!

『このハイヒールを作るにあたって、取り寄せた足部に合う靴がなかったので、まず木型を作ってもらいました。ヒールの部分は、安いパンプスを買ってきて木型に合うように切り取ってくっつけたんです。12cmのヒールをオーダーメイドで作ると異常に重くなっちゃうんですよ。なので、この靴自体は異常に軽いです。

『甲をしっかり固定しないと、脱げない丈夫な物にはできないよって言われたので、昔履いていた補装具をイメージしてちょっとごつめのデザインにしました。でも、できればもっとシャープでシンプルな物にしたいんですけどね。

『ハイヒールなんて、歩きやすさとはほど遠い存在だろうと思ったんですけど、履いたときに異常に歩きやすかったんですよ。初めて履いたときはびっくりしました。歩いた瞬間、次の一歩が出て、ふだん履いているベタ足の義足よりもすごく歩きやすい。そしてハイヒールの持つ力のせいか、やっぱりこれを履くとなんか前向けるっていうか、上向けるっていうか、元気になれるんですよね。ハイヒールの魅力なんでしょうね』。

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