0.01%だけ
地球に存在する真水は、全体の2.5%といわれています。そして、直接人間が飲むことのできる水はそのうちのわずか0.3%。世界の水不足は現在も止まることを知らず、ますます深刻な問題となっています。その原因の大きな一つが、工場で使われる無駄な水の使用です。人間が直接飲むことのできる水は割合的に非常に少なく、地球上全ての水の中ではわずか0.01%だそう。その微々たる量のうち、8%は各家庭に行き渡り、22%は工場で使われ、70%は灌漑用の水となります。調査が正しければ、人間による水汚染の爪跡は、40%にまで上るでしょう。
毎日のおしゃれと水
アパレル産業は、“水の利用”に対して過度な依存状態にあるだけでなく、①繊維作物の栽培に使用した農薬、②染色用の薬品、③衣料洗剤によって、地球上の水全体に強烈なダメージを与えています。
アパレル産業で使われている繊維は、天然繊維が4割ほどであり、そのうちコットンが90%を占めます。そしてこのコットン栽培こそ、アパレル産業のサプライチェーンの中で最も水を消費する部分の一つなのです。その深刻さは、現在コットン栽培が行われている地域――南アメリカやインド、西アフリカのマリ、そしてアラル海地域を見れば一目瞭然!
さらに、アパレル産業と水との関係は、コットン栽培だけにとどまりません。アパレル業界による水汚染の14.4%は、縫製の段階に関わっています。工業水汚染の17~20%は、染色や薬品処理によるものであり、原料から生地を完成させるまでに、8000種もの化学薬品が世界中で使われているそう。そしてその薬品が混ざった汚染水の多くは、真水の源泉地に排出されているのです。
一番の問題は、水を正しく取り扱うという市民としての道理を尊重していない人々が、工場運営側にはびこっているということ。ただし、サプライチェーンだけに責任を押し付けるわけにはいきません。私たちが毎日のように行っている家庭での洗濯も、この問題に大きく加担しているのです。家庭で排出される汚染水の40%は洗濯後の水であるというのも、心に留めておかねばならないでしょう。
ドイツからヨーロッパを介して黒海に注ぐ大河、ドナウ川のリン酸汚染の16%は洗浄剤が原因。それを受けて現在EUは、洗浄剤にリン酸を含むものを一切禁止するという法的処置を取っています。
アパレルは変わる?
世界の人口が増加するにつれて、水源確保の問題はさらに深刻化するでしょう。水へのアクセスがますます複雑化するとなると、テキスタイル/アパレル産業も、近い将来にはコットン作物への依存から他の原料へと徐々にシフトせざるを得なくなるかもしれません。コットンに代わる繊維資源の探求は、日進月歩で進んでいます。利用できる自然繊維の種類は膨大ですが、今までコットン栽培に注力し過ぎたばかりに、その研究が遅れているという側面もあるのです。
近年では工場での調査も進み、なるべく環境に負荷をかけない生地の製造や縫製のアプローチも導入され始めました。例えば、 Levi’sの Water<Lessシリーズのように、製造時に使用する洗浄剤や水を極力減らして作られた洋服も市場に出てきています。
安価なものを提供することだけにシフトし、地球に対して乱暴な行為を繰り返すよりも、製造プロセスに改良を重ね、地球の資源を残そうと努力すること。それは、地球という星で私たちの未来をつなげていくための希望の光にも見えます。それがたとえ微かなものであっても、その一歩は確実に地球を変える力になるはずです。私たちは、このような企業側の真摯な思い、努力を再評価するべきではないでしょうか。
もちろん、洋服を作るプロセスに留意しながら、現在のビジネスモデルを続けていくのを困難に思うサプライヤーも多くいることでしょう。ならば、アパレル業界の要となる人物たちがブランドを問わず集まり、これからのファッション業界のあるべきかたちを議論しあう場を設けるのも一つの方法です。
ただ競争して、蹴落とし合うだけの時代はもう終わり。これからは、みんなで未来のためにすべきことを考える時代がくるのだと、じわじわと感じています。決して、他人事ではありません。特に衣料は、私たちの生活には欠かせないもの。いまからちょっと、洋服に対する視点を変えてみませんか?