「アップサイクル」という言葉をご存知ですか? アップサイクルとは、「使用済みの物や再生品を使って、元の製品より付加価値の高いものに作りかえること」。特にファッションの分野では、生地見本用の布や、縫製時に余った布切れ、売れ残りの洋服などを再利用し、よりクリエイティブな洋服として再び市場に送り出すという動きが、海外を中心に広がり始めています。
つい先月、パリに本部を置く世界的な英字新聞「インターナショナルヘラルドトリビューン」のSuzy Menkesが、ロンドンのファッションサイクルにおける今後のキーワードとして「アップサイクリング」を取り挙げるなど、この流れはますます勢いを加速させる予感大です。
この分野の第一線で活躍するのは、「From Somewhere」のデザイナー・Orsola de Castro。米情報サイト・Ecouterreによれば、彼女は先日、香港のサステイナブルファッション団体・Redressが主催する「EcoChic Design Award」の一環として香港で行われた講義「EcoChic Design Academy」の講師として登場。香港のデザイナーのタマゴたちに「これからのサステイナブルファッション」の戦略を伝授しました。
ちょっと講義の様子を覗いてみましょう。
ロンドンを代表するサステイナブルファッションの展示会・Estethicaの発起人もであり、「類まれなる“がらくた”コレクター」を自称するOrsolaは、15年以上も前から洋服の製造過程で生まれた布切れに新たな命を吹き込み続けている“アップサイクルの達人”です。その達人は講義の中でアップサイクリングについてこのように述べています。
アップサイクリングは、環境問題をデザインで解決する方法です。これは、クリエイティブな感覚を持つアーティストだからこそできる、衣料廃棄物と向き合うための本質的なアプローチなのです。
製造過程で出る余分な廃棄布を減らしたいと考えているデザイナーに向けて、彼女が提案するのは、次の5つ。
現在のファッション産業は、衣類を過剰に生産し続けている。ゴミ山に捨てられているものの中には、美しいものや、デザイナーにとって良い素材がたくさんあります。アップサイクルとは、モノの見方をちょっとずらしてみたりして、新しい見方に挑戦することです
と、Castroさんは言います。
次から次へと、ただ新しいものを作り続けるのではなく、今ある資源を利用し、私たちの感性・工夫によって新たな価値を生み出す作業。それはそんなに簡単なものではないかもしれませんが、考え方はすごくシンプルで尊いものに思えます。
市場でモノが飽和状態にある今、これからの「アップサイクリングビジネス」が確実に市場の中で根を下ろしていくために必要なこと。それは、仕掛ける側の「匠」な技・クリエイティビティーと、私たち消費者の「足るを知る」心。そしてこの2つは、日本人に古くから根付いているはずの粋なマインドではありませんか! この新しい時代の流れは、私たちが忘れかけていた日本人魂を取り戻すためのキーワードにもなるかもしれません。
コメントを投稿するにはログインしてください。