エシカルな商品を購入することは本当に「いいこと」になっているのだろうか? 商品を購入することで、「森林を守ることにつながる」「雇用を創出する」などとブランド側は言うけれど、それって本当なんだろうか?――これは誰もが一度は思ったことがある疑問ではないでしょうか? エクアドルでフェアトレードアクセサリーを作る「the Andean Collection(現・Faire Collection)」というブランドを展開するデザイナー・Amanda Judgeが「Ecouterre」に寄稿。ブランドを経営する見地からその疑問に答えました。
エシカルな商品を購入することは本当に「いいこと」?
エシカルな商品を購入することは本当に「良いこと」になっているのだろうか? 「商品を購入すれば、森林を守ることにつながる」「雇用を創出する」などとブランドや企業はいう。しかしそれは本当なんだろうか? ーーこのように思ったことがある人は少なくないだろう。
それでも確かにいえるのは、私たちの世代はみんなお買い物が大好き。消費者のニーズが企業にまた新しいものを売りに出させる。もし世界を変えたいなら、欲しいものを変えなければいけない。
その「欲しいもの」を作っているのは、デザイナーや企業。彼らが生産においては責任を担っている。これらの企業の行動がサステナブルな消費を生むかの鍵になっていることはいうまでもない。彼らが真にエシカルなものづくりをすれば、サステナビリティへの動きは加速するだろうし、ただマーケティングとして「フェアトレード」「エコ」と謳っているだけならば、すぐに本当に正しいことをしている企業や、賢い消費者から疑いの目を向けられる。
「賢い消費者」が増えてきて、昨今さまざまな認証ラベルや証明書が発行されている。でも、本当にエシカルなファッショニスタなら、それらに頼らず、自分の基準で判断すべきだ。
じゃあ、それにはどうしたらいいだろうか? まず、企業はサステナブルな生産を行うための社内基準を公開すべきだし、新入社員もCEO同様サステナビリティへの関心を持てるようにすべきだ。
サステナブルな生産を行うための社内ルール
さて、筆者の運営するブランド「the Andean Collection」でのサステナブル生産のための社内基準をご紹介しよう。
1.(生産にあたって)エコか非エコか、という選択を迫られる場面ではできる限りエコを選ぶ。ただし、キャッシュフローに留意する。
創業時はとかくお金がないもの。無理をして結果破産してしまうようなことは避けるべき。成長した後でもスケールできる。
2. ソーシャルグッドを企業として遂行することで、財務体制が悪化するなら、しない。
ランニングコストをカバーする十分な資金がなければ、未来に何もできなくなる。
3. ソーシャルグッドを遂行することで、利益が多少減るという場合は、やる方向で考える。
利益が多少減ってもランニングコストやキャッシュフローにさしたる影響を与えないなら、やる方向で考えよう。すでに自社に利益があるなら、ソーシャルグッドで誰に利益をもたらしたいのか考えてみよう。
4. 生産者、スタッフ、職人たちとなんでも共有する。
あなたが途上国で生産を行っているなら、これは本当に大切なこと。ウェブサイトを有しているならスタッフ・生産者に見せ、市場価格の不均衡の背景を伝える。そして、ブログ更新に協力してもらい、いっしょに思いを発信してもらう。それは彼らにパソコンスキルを磨く機会にもなる。
5. 顧客に対して正直でいる。ブログに書けないようなことはしない。
私は母にこう言われて育った。「おばあさまに知られたくないことはしないのよ」。「the Andean Collection」では、その教えを真剣に捉えている。ありとあらゆることをブログ上で告白しているが、それによって、透明性に対しては大きな自信がある。
その効果は?――生産者へのインパクト
この5つを守って事業を続けていま、生産者には大きな変化が現れている。働き始めたころは、ガスも水道もない家に住んでいた女性がいるが、彼女はいましっかりとした家を持ち、コックすら雇っている。炊事の時間を子どもと過ごす時間、仕事の時間にあてている。子どもを学校に通わせられるようにもなった。それでは、生産者に対して「the Andean Collection」が守っていること4つを紹介しよう。
1. 安定した収入。
未来のことを考えられる余裕を与えることができる。彼らのスキルが時代のトレンドについていけるように、定期的に商品もトレンドに応じたものにする。それにより、彼らには常に仕事を与えることができる。
2. ビジネススキルも教える。
彼らも経済を回すメンバーだから、必要なビジネススキルを習得すべき。「the Andean Collection」がなくなったとしても、彼ら自身で事業が回せるほどに教えている。
3. 保健についても指導する。
健康管理、栄養管理、妊娠・出産についてなど。その知識は子どもにも受け継がれる。
4. サプライチェーンのリサーチに最も労力を。
現在、われわれも現地学府とともに、サステナブルなサプライチェーンがいかにその土地の生態系に影響するかを調査している。それによって、天然素材をしようすることが現実にどのような効果をもたらすのか実証しようと試みている。
消費者との関係性――透明性とは?
一度会社としてのガイドラインを制定することができたら、それをはっきりと消費者に示すことが欠かせない。これがうまく行けば、大きな注目を集めることができる。そして彼らは、あなたの会社の良いモニターになってくれる。会社がミッションの本筋からそれるような行動をとってしまったとき、あなたを事業の本筋に呼び戻してくれる。「the Andean Collection」のミッションは、南アメリカの貧困家庭をエンパワメントし、きちんと生産された天然素材を使用することで、その地の緑化の後押しとなることだ。
現在「the Andean Collection」は世界2000カ所で販売しているが、新たな問題は次々と降ってくる。しかし、成長はわれわれの事業オペレーションにおけるサステナビリティを強化することにつながっている。よりコストがかかることができるし、生産スタッフに十分に賃金を保証することができている。
私は、誰も「エシカル」や「サステナブルな手法」の意味を正確に定義することはできないと思っている。でも、その必要は本当にあるのだろうか? 正直でいたいから、顧客が尋ねればそれに答える。顧客がエシカルな企業行動を求めれば、それを実行する。変化は確実に起こっている。必要なことは、企業と消費者が絶えず対話できる場を持っていることだ。