2016年3月、カンボジアで新しいブランドが生まれた。名前は「SUSU Journery from/to Cambodia(スースー・ジャーニー・フロム・トゥ・カンボジア、以下『SUSU』)」。国の特産である“いぐさ”をアクセントに、かばんやポーチ、サンダルなどのファッション雑貨を展開している。ターゲットは、日本の20代~30代の女性だ。
ブランドを手がけるのは、カンボジアとインドで児童買春問題に取り組む認定NPO法人かものはしプロジェクト。商品は、貧しい家庭に生まれた女性たちが作っている。
「SUSU」が目指すのは、「社会に良いことをしているから買ってもらえるブランドではなく、本当に求められるブランド」。
来年、かものはしプロジェクトから独立し、日本での本格展開を控える「SUSU」の挑戦を紹介する。
ものづくりを通した人づくり。自分らしく生き抜いていく力=ライフスキル
「自信を持ち、前向きに生きる人を一人でも多く増やしたい」
これは青木さんのライフミッションだ。初等教育も十分に受けられず、日雇いの仕事をしてきた女性たちが、安定した収入を得て、友だちもでき、夢を語りだす ーー8年間、自分に自信を持ち、問題と向き合い解決する姿勢を身につけ、変わっていく女性たちを何人も見てきた。
環境や条件で人は変わる。ならば、自分らしく生きていくための力=ライフスキルを身につく場所を広げていきたい。それを可能にするのが、「SUSU」だ。
作り手と買い手が「頑張る」気持ちを贈り合える商品へ。
日本の厚い壁、突破のカギは「体験」
今年5月、玉川タカシマヤ、渋谷ヒカリエで、ポップアップ・ストアを開催した。多くの人が足を止め、「かわいいね」と商品を手にした。念願の日本での店頭販売。手ごたえを感じる一方で、素材や機能の向上など改善しなければならないことも見えた。
ファクトリーの商品の最大の強みは、購入することで女性たちを支援できる=社会貢献になるという“ストーリー”。しかし、青木さんは、「人が、“かわいい”かどうかを直感的に判断するのは最初の3秒。次の3分の間に、素材や機能、値段、使っているシーンを想像して他の商品を比較する。購入を決める基準に、“ストーリー”は含まれない」と考える。
事実、「SUSU」購入者の多くが、団体や活動を後から知る。口コミでの広がりや全商品を揃えたいと思うロイヤルカスタマーが出現する“熱狂”の段階へ持っていきたい。その鍵は、“体験”だという。
「SUSU」のターゲットである日本の20代、30代の女性は、社会のロールやライフステージの狭間で、不安やプレッシャーを抱えながら生きている。「SUSU」を作っている人と買ってくださる人が、お互いの痛みを知ることができれば、共感が生まれる。この2つがつながったときに、選ばれるブランドになれると思うんです。
「SUSU」は、クメール語で「頑張って」。商品に関係する人たちが“応援”の気持ちを贈り合え、エネルギーをもらえるブランドにしたい。
作り手と買い手の関係を近づけたい。いま、これが分断されているので、劣悪な環境での仕事がまかり通ってしまっている。
人を大事にする職場で作られる商品を買う人が増えれば、企業が行動を変える。いま、望む人生を選択できていない人も、自分らしく生きていく力を身につけられる場所が増え、循環が生まれると思うんです。
来年4月に独立する「SUSU」。日本での店舗オープンに向け、世界に選ばれるブランドを目指す。
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