品質の高さや技術、美しさから高い評価を得ている日本のものづくり。新しい技術の台頭や後継者不足などにより存続の危機が叫ばれる中、国や民間、個人によるさまざまな取り組みが行われている。
兵庫県の播州刃物や播州そろばん、島根県の
「グローバリゼーションの中で生き残るには、どこも真似できないものを育て、伝えること」と考える小林さんに話を聞いた。
値段を上げるしかない。「高くても売れる」という意識改革。
兵庫県小野市と三木市は金物の町として、はさみや包丁など家庭用刃物の産業に230年以上の歴史を持つ。
しかし、職人の高齢化により後継者問題は深刻だった。また、大量生産で出回る刃物との価格競争で、値段は下がり続けてきた。
新たな人材を雇用するには、生産量を下げ、利益率を上げる必要がある。「単価を上げるしかない」。
しかし、国内市場は、問屋で構成される組合によって金額の秩序が保たれている。いままで販路開拓をしていないところであれば、と考えた小林さんは、「よし、海外へ行こう!」。
当初デザインや刃物の見本市が開催されているヨーロッパを想定したが、東京の展示会出展さえ理解を得るのに一苦労だった。
小林さんの熱に押され、「半信半疑やぞ」と出展が決定。商品を地域の名を取り、「播州刃物」と命名し、展示物にもこだわった。さまざまな刃物を取り扱っている協奏的なイメージを、蛇腹形式のパンフレットで表現した。
展示会では、フランスのディストリビューターから声をかけられ、3カ月後にはパリの展示会に出展。その後も、精力的に海外の展示会に足を運び、フランスの他、ドイツやアメリカ︎など、10カ国以上︎の販路を開拓した。
売上は、2013年の東京での展示会出展から昨年まで、毎年倍の売上となっている。国内外のメディアでも報じられ、注目を浴び、熊本県から、会社を辞めて「やりたい」という人が現れた。
後継者を諦めていた職人も問屋も可能性を感じ、2015年10月、正式に弟子入り。嬉しい連鎖も起きている。
はさみ分野では、断り続けていた息子の弟子入りを父親が受け入れたり、「どうしてもやりたい」という希望者が増えているという。また、職人の組合が問屋の組合に初めて値上げ運動を起こし、問屋が応じた。
人が雇える可能性が広がった、と小林さんは嬉しそうだ。
僕らが目指したのは、『意識改革』。高くても売れると問屋さんに思ってもらうこと、自分の技術を残すべきだって職人さんに声をあげてもらうこと。それらが事実として分かれば、意識は絶対に変わる。
後編は、デザイナーの枠を超え活動を行う小林新也さんのディストリビューターにかける想いを紹介する。
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