「ガングロギャルに会うよ!」
取材前。嬉しさのあまり会う人会う人に言っていたら、みなまず、驚きとともにこう返してきた。
「まだいるの?!」
1990年代後半から爆発的に“増殖”した「ガングロギャル」は、2000年代半ばには雲散霧消した。
くだんのガングロとは、ぇりもっこりちゃん(24)。「たぶん、ウチが最後のギャル」と話すのも嘘ではないだろう。
ぇりもっこり
1993年2月4日生まれのO型。お酒とぐでたまをこよなく愛する24歳。2014年Black Diamond加入。2015年、関東エリアリーダーに就任。ガングロカフェでも店長としてスタッフをまとめる。男ウケを狙って清楚系に流される女の子が多い中、頑なに"強めギャルスタイル"を貫き通す姿は『平成ノ傾奇者』と賞賛する声も多い。
「(ギャルを)やりたいからやる」と言い切り、10年以上ガングロを貫くぇりもっこりちゃんは、ガングロとして以上に、ギャルの魂を受け継いだ最後のギャルかもしれない。
ギャルの魂とは? ぇりもっこりちゃんがいまも愛し、住み続ける地元・栃木県栃木市都賀町を訪ね、そのルーツを探った。
ただでさえ大変なガングロギャル。それが時代の流れから、やってくれる人や場所、使えるモノがどんどん減っていっており、ますますギャルをやるのが難しい時代になっている。
この10年で、ぇりもっこりちゃんが通っていた日サロも値上げ。使っていたコンタクトや黒肌に映える化粧品も、どんどん廃盤になっていっているという。ギャル服ブランドも次々となくなり、いまは自分でリメイクしたりして、工夫しているという。
時代がどんどん変わっていくから、めっちゃ生きにくいです。(ギャルが流行った)あの当時やるほうが、周りにもそういう人多いし、服とかもあって生きやすいと思うんですけど、当時だとやっぱりそれが「ふつう」になるじゃないですか。いまギャルやってる子は、個性とか、人と同じことやるのが嫌で、「あえて」ギャルやってる人が多いんで。逆に当時だったら、清楚とかやってたいな。
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いまも、栃木から渋谷まで片道2時間近くかけて通いながら仕事を続けるぇりもっこりちゃん。渋谷との往復は大荷物。写真で肩にかけているバッグは5kgはある。それを2つ担ぐのがデフォルトだそう。
逆風の中でも自分を貫き、ギャルサー(※ギャルサークル、の略)ユニット・BLACK DIAMONDのリーダーとして、ツイッターやメディアでギャルを発信する姿に、ファンからの「憧れています!」「ぇりもっこりちゃんみたいになりたい!」という声は後を絶たない。
しかし……
そう言ってくれた子に、「後悔するから、やりたいときにやりたいことやったほうが良いよ」って言うと、「親/学校が……」「田舎だから周りからどう思われるか分かんないです……」って言われるのがあまりにも多い。でも、そう考えてるんじゃこの子はギャルになれないな。心からギャルじゃないな、って思っちゃいますね。
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バッグの中で最も重かったのは化粧ポーチ(右)。自宅の部屋は頑なに「汚いんで! “汚部屋”なんで!」と、見せてもらえなかったが、ポーチの中は意外に(?!)整理整頓されている。
「やりたいからやる」 それがギャルの本懐だ。
しかし自分の意志を貫くより、いまはファッションも、周りの目を最優先に考える時代かもしれない。
ほんと男ウケ多いですね。以前、(BLACK DIAMONDの)妹グループの子といっしょにテレビの仕事したとき、「どういうギャルになりたいですか?」って質問に、「私は黒く焼いても、男ウケが良い、男の人がかわいいと思う黒さにしかしたくない。小麦くらいがいいです」って言ってて。男ウケとか言ってる時点で、考え方がギャルじゃない。黒ければ黒いほどかわいいし、男ウケより、自分がやりたいからやってるっていうのが大事なんで。だから、「なんか違うな」って。
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周りの目に配慮することは、決して否定すべきことではないし、むしろ必要な場面だってある。「好かれたい」という欲求も、決して悪いものではない。しかし「もしそれが、自分らしさの足かせになっていたとしたら……?」と、思わされてしまう。「ファッションこそ、自己表現のためのツールじゃないのか……?」
自分らしさを貫きすぎても、弊害はもちろんある。
まず第一に、男性との出会いに恵まれない! と、ぇりもっこりちゃん。
「いいな」と思った人とか、気になってる人とか、だいたいギャルが嫌い。「ふつうになったら」「もっと薄くなったら付き合えるけど、その状態で歩くのはしんどい」って、ほぼ100%言われます。でも、「見かけでそう言うくらいなら、もういいや」って思うけど、「やっぱりギャルだめだな」「みんな清楚好きかよ」って、思う気持ちも正直あります。
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年齢を重ねるにつれ、葛藤もある。グループでも3人だけだった黒い“強め”仲間の一人が、今年早々結婚を機にギャルを卒業。地元に帰ってしまったのも、大きなダメージのようだ。
その子が故郷に帰る前には、3人で泣きながら断髪式をしたという。残る“強め”ギャルはぇりもっこりちゃんとあと1人。この状況に、寂しさがある。
ギャルをいつ辞めるかはけっこう、ハタチ越してから考えてますね。今年25(歳)になるんで、結婚とかいろいろ考えると……。
でも、謎な責任感じゃないですけど、一応肩書的にもリーダーなんで、ウチが辞めたらそんな派手な子いないのに、グループを引っ張っていける子いるのかな、とか。もっとでかいグループにしてから辞めないとかな、とか考えちゃって。
BLACK DIAMONDでもここまで“強い”ギャルはこの3人だけだったという。(提供:ぇりもっこり)
ギャルを続けて、ぇりもっこりちゃんが目指すものはなんだろうか?
ギャルを増やしたいな、とは思います。また流行ればいいなっていうより、「やりたいのにやらない」っていう人があまりに多いし。それに単純に、ジャンルでギャルがいちばんかわいいと思うし、ギャルが好きなんで、それをいっしょに発信してくれたりとか、かわいいと思って理解してくれて、やってくれる人が増えたらいいな、とは思いますね。
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その延長で、「どんなおばあちゃんになっていたい?」と、尋ねたのは愚問だったな、と後から思う。
ぇりもっこりちゃんが、「考えたことない! ぜんぜん分かんないや……」と、答えるのは当然だろう(「ゲートボールしてたい」と、なんとか答えてくれたが)。
だって、ギャルは、いましかない「いま」を全力で生きているのだから。
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