創業115年を迎える西脇市にある産元商社・株式会社丸萬は、2015年7月にオリジナルブランド「POLS(ポルス)」を発表。テキスタイルデザイナー・梶原加奈子率いるKAJIHARA DESIGN STUDIOとともに、西脇で開発・製造した「Made in Japan」のテキスタイルブランドだ。
「Made in Japan」の価値が見直されつつあるいま、「産地」という言葉もよく見かけるようになった。「産地」にはそれぞれ独自の風土、気候、文化、歴史がある。その独自性なしには、「産地」として育つこともなかった。
「POLS」の生まれる産地・播州とはどういうところなのか? 「POLS」のテキスタイルが生まれる道筋をたどってみよう。
京都の近く、温暖な気候
温暖な気候が、綿花栽培に適していたため、1700年代から綿栽培が行われていた。京都から西陣織の技術が導入されると、木綿を使用した播州織として発展。
播州織では、まず糸を各種の色に染め上げ、この色糸を使ってさまざまな模様に織り上げる先染織物という手法を取る(※対して生地にプリントすることは後染織物と呼ばれる)。
糸をタテ・ヨコに組み合わせて織る際に、本数・並べ方・組み合わせ方・太さ・色などを組み合わせれば、実にさまざまな柄を生み出すことができる。「POLS」のテキスタイルのおもしろさは、この播州織の伝統で培った「織り」の技術力にある。
いまは最新鋭のコンピュータージャカードの技術を使い、織り方を細微まで調整してプリントのように柄を描き出したり、糸の太さや本数を変えることで色の見え方に変化をもたらしたり、ヨコ糸を切ってパッチワークのようにしたり……同じタテ糸・ヨコ糸を使っていても、織り方しだいで何種類にも見え方を変えさせることができる。「POLS」では、それらテクニックをふんだんに詰め込んだ。
「織物のことを本当によく知っていないとデザインできないし、知っていても組み立て方を知らないと実際に織れない」と言われるが、その「組み立て」を担当するのが丸萬の上田善則さん。そして織り上げるのが遠孫織布株式会社の遠藤由貴さんだ。
「人」というヨコ糸
もともとストライプやチェックが中心のメンズのシャツ生地中心だった播州織りだが、丸萬・丸山恒生社長の下、約10年前からレディース向けの生地開発に挑戦。
丸萬は産元商社として、地域を代表してテキスタイルを発信し、また世間のニーズを実際の作り手まで届ける役割を担う。ゆえに日々現場には課題が振りかかる。特に、レディースが必要とする素材や感性を理解し、やり方を変えていくためうえでも、社内・産地の意識を変えることが重要だったと、丸山社長は言う。
しかし、そのたびに現場では職人さんたちが知恵を凝らし、壁を乗り越え、新しいものを生み出している。
先の播州織工業協同組合では、ヨコ糸を後から加工してゆらゆら歪ませて独特の風合いを醸す新技術「クラッシュ加工」を開発。また村徳染工株式会社では20年にわたり、SEを自社に抱えてスピード化を図っている。先染織物は、必要な色の糸が全部揃わないと織り始めることができない。緻密な生産管理と速度がますます問われる時代になっていることを、日々感じているからだ。
土地、それが有する気候や風土というタテ糸に、人というヨコ糸が、いろんな並び方、協力の仕方、人数、個性で産地の中で歩んでいる。西脇という街を訪れて感じるのは、「POLS」のテキスタイルと同じ、土地と人が組み合わさって描く無数の可能性なのだった。
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