当連載ではこれまで、ダイヤモンドにまつわる課題(第1回)と、紛争ダイヤモンド原石を予防するための認証制度「キンバリープロセス」の課題ついて(第2回)解説してきました。
紛争の資金源、児童労働、強制労働、環境破壊などを経て採掘されたダイヤモンドは、通常のサプライチェーンに紛れ込み、ジュエリーとなって私たちの手に届いています。第3回の今回は、その背景をお伝えします。
いわくつきダイヤが、どのようにして一般市場に流れているか
なぜ、そうしたダイヤモンドが私たちの手元に届くのでしょう? それには、ダイヤモンドの長いサプライチェーンがあります。
ダイヤモンドが採掘されてから顧客の手に届くまでを、分かりやすく表すと下図1のようになります。
これをもう少し詳しくすると、下図2のようになります。
通常、世界中で採掘されたダイヤモンドは、ベルギー、イスラエル、ニューヨーク等の大きなダイヤモンド市場に集められます。そこでダイヤモンドは産出地やカット工場に関係なく混ぜられ、4C(カラット、カラー、クラリティ、カット)基準により分類されます。つまり、その時点でダイヤモンドが持っていた産出地やカット工場等の情報が失われます。その後、仲買人やバイヤーに購入されたダイヤモンドは、ジュエリー製造工場や卸を経て小売され、顧客の手に届きます。
採掘されてから多くの人の手や大きな市場を経るため、顧客がダイヤモンドを手にする頃には、そのダイヤモンドがどこで採掘・カットされたのかという基本的な情報を得ることすらほぼ不可能。この長いサプライチェーンを利用し、素性の分からないダイヤモンドを通常の市場に紛れ込ませることはさほど難しくないといえます。マネーロンダリングならぬ、ダイヤモンドロンダリングです。
実際のサプライチェーンはもっともっと複雑で、まるでクモの巣のよう。お金の流れも勘案すると、下図3のようになります。
なぜダイヤモンドは密輸されやすいのか?
なぜダイヤモンドはこんなに簡単に密輸されるのか―― それはダイヤモンドの性質によるところが大きいのです。
- ・小さい
- ・軽い
- ・腐らない
- ・金属探知機に引っかからない
- ・どこで採掘されたものか、特定が困難
- ・経済的価値がある
さらにそれ以外にも、①アフリカ内陸国に目立つ甘い国境警備、②国によって異なる輸出関税、という2つの要素が、密輸に拍車を掛けています。
②について説明すると、ダイヤモンドを産出するアフリカ諸国では、3〜12%の幅広い税率をそれぞれが設定しています。そのため、税率の高い国の人々の中には、税率の低い近隣諸国に密輸したり、その国の仲買人に売ったりして、損を減らそうとする人がいます。密輸先で採れたダイヤモンドとして販売されても、誰にも分かりません。
最終回の次回は、これまで述べてきたような課題を解決するために海外でどのような動きがあるのか、倫理的なダイヤモンド・宝石を認証する機関、あなたができることについてお伝えしたいと思います。
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