100%エシカルなサプライチェーンで1兆円を目指す 〜石川社長に聞く、クロスカンパニー新ブランド「KOE」

A Picture of $name HITOMI ITO Photography Courtesy of 株式会社クロスカンパニー 2015. 2. 5

創業20周年のクロスカンパニーが立ち上げたブランド「KOE(コエ)」が、9月に岡山市内の1号店でスタートした。「フェアサプライチェーン」をキーワードに、世界進出を狙う国際戦略ブランドとして、売上高1兆円の目標を掲げている。宮﨑あおいがCMに出演する「earth music&ecology(アース ミュージック&エコロジー、以下「アース」)」などのブランドで急成長してきた同社にとって「KOE」とはどんな意味を持つブランドなのか? なぜ「フェアサプライチェーン」に取り組むのか? 代表取締役社長の石川康晴氏に聞いた。
(※取材を行ったのは、2014年9月3日です。)

ーーフェアサプライチェーンを差別化のポイントとしても掲げている。

ファッションとはすぐ模倣されてしまうもので、3カ月もすれば同じ商品が並んでいます。しかし難しいサプライチェーンのしくみは、他社がやろうとしてもそんなにすぐにはできないと思うので、差別化のポイントとして非常に重視しています。

しかしフェアサプライチェーンは、差別化の意図だけで整備しているのではありません。最終的に、アパレル業界の改革、社会の流通の改革が弊社と「KOE」の大義です。

まだ仮説の段階ですが、フェアなサプライチェーンでものづくりをすると、商品の品質も上がると思っています。お客さまが手に取ったときに、目に見えるかたちで「品質」という差別化ができます。「なぜこの品質が、この値段でできるのか?」と思ったお客さまに、弊社が倫理観のあるサプライチェーンで作っていることが伝わっていくと、長期的な顧客継続率につながるのではないかと思っています。

そうして売上が拡大していくにしたがって、世界中で「そういう倫理観のある服を買いたい」という世論が湧き上がれば、どの企業もそうしないと売れなくなってきます。すると、地球にやさしいものづくりに世界中で変わってくると思っています。アパレル業界が長らく目を向けてこなかった倫理というところにメスを入れられると思っています。

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ーー フェアサプライチェーンの構築に当たって、参考にした企業などはあるか?

ネスレです。特に、同社がサステナビリティへの長期ビジョンの中核に据えているコーヒー豆のサプライチェーンを研究しました。

アパレル、特に日本のアパレル業界で、サステナビリティに目が行かない理由ははっきりしています。サプライチェーンの川上・川中・川下で、ほとんどのアパレルメーカーは川中と川下でしかビジネスをしていません。川上の原料調達は、主に商社に依存しており、アパレル業界そのものの中で、川上から川中への流通を管理している人がいませんでした。それも安いか品質が良いか、という視点でしか管理されておらず、人権・労動・環境などの視点で管理する人は皆無だったのです。それが、これまでの日本のアパレルの流通だと思います。

これを「KOE」では川上からやっていきます。川上から川下まで全部やっていく、それも特に川上から川中に強いところを研究しないといけないと思い、ネスレを研究しました。アパレル業界は、フェアなサプライチェーンを作る点においては、他産業から遅れを取っています。だから、アパレルどうしで比べても意味がありません。他産業に学び、本気で全部を変えてやるという意気込みで研究しました。

ーー 「フェアサプライチェーン」への取り組みは、バングラデシュでのラナ・プラザビル倒壊事故がきっかけと聞いたが、そもそも貴社はCSRや柔軟な労働環境の整備へも積極的だ。もともとそういう興味はあったのか?

「アース」という名前を見ていただくだけで、エシカルな発想があると思われると思うんですが、そのときから文脈は全てつながっていますね。当初「アース」のシャツは、環境負荷の低い麻が中心でした。またデニムの加工も、天然を意識したケミカルを使わない加工を岡山でやっていました。しかしアジアを中心にヤング世代向けのファッションをやっていくにつれ、気づけば100%フェアでないものづくりになっていきました。「KOE」は、そこをもう一度やり直す意味も込めています。

ーー「KOE」のサプライチェーンのしくみを、貴社の他ブランドでも実践していくということだが、その具体的計画はどうなっているか?

「KOE」の服を依頼している工場は、他のブランドでも使用しており、すでに工場の視察は実施しています。「KOE」同様、工場へ視察へ行き、認定した工場のみと取引をします。全ブランドの工場も、3年でフェアサプライチェーンに移行したいと考えています。

ただし、水準を満たさない工場についても、切り捨てるのではなく、「育てる」という視点で一緒に改善に取り組んでいきたいと思います。最終的には150ほどの工場に絞りたいと考えています。

ーー安価な価格で最先端のファッションを提案するSPA企業として急成長を遂げてきたと注目されているが、クロスカンパニーの労働環境はどうか?

私たちの会社では長時間労働もサービス残業もない、ということを明確に伝えたいと思います。長時間労働やサービス残業が起こらないようなしくみと文化を作っています。

管理本部長には残業をした社員のリストが届きますし、サービス残業が発覚したら懲戒対象となることを徹底して伝えています。過去にサービス残業を黙視した社員は降格になっていますし、本部も夜7時になると電気が落ち、申請がないと残業できません。他社でいわれるような、タイムカードを切った後に残業するなども、弊社の文化的には起こりえないと思っています。

どんな企業でも、辞めた社員というのは、なにかしらの不満を持っています。そういった人々がインターネットにさまざまな書き込みをするのは、残念ながら弊社に限った話ではないと思います。

ーー「フェアである」「エシカルである」というバリューは、なかなか伝わりにくい。「KOE」のバリューはどのようにして伝えていく予定か?

今日のような取材を通じて、お客さまにも企業の方々にも伝えていきたいです。あとはワークショップなども積極的に行っていきたいですね。また、SNSを使って能動的にアクションしていきたいです。さらにいえば映画なども作っていきたいです。そういうものが、お客さまに伝えるには分かりやすくて効果的だと思います。分かりやすさ、というのは重視していきたいですね。

「KOE」では、世界各地で大切に語りつがれてきた服づくりにまつわる伝統や技術を、未来へ伝えていくために、作り手の声をもっと聞きたい、届けたいという思いからプロジェクト「KOE From(コエ フロム)」を展開。2014年10月5日に開催された第1弾は「倉敷帆布」とのコラボレーション。その商品であるランチョンマットを使用し、「食」をテーマにワークショップを行った

「KOE」では、世界各地で大切に語りつがれてきた服づくりにまつわる伝統や技術を、未来へ伝えていくために、作り手の声をもっと聞きたい、届けたいという思いからプロジェクト「KOE From(コエ フロム)」を展開。2014年10月5日に開催された第1弾は「倉敷帆布」とのコラボレーション。その商品であるランチョンマットを使用し、「食」をテーマにワークショップを行った

ーー 最後に、「KOE」に対する意気込みをお願いします。

社会の問題解決のために、フェアサプライチェーンを100%やり抜きます。人権・労動・環境に配慮してこなかったアパレル業界に限界がきていると感じています。そして世論もそれに気づいています。それを、世界で初めてクロスカンパニーがやっていく、というのを宣言したいと思います。

KOE

Website:http://www.koe.com/

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