你好! プラタナスの新緑が心地良い上海からです。私の上海生活もまもなく2年半が過ぎようとしています。実は、この第10回目をもって、この連載は一度終わります。
この国での2年は毎日めまぐるしく、日本で生活していたときと比べたら倍のスピードでモノゴトが進んでいったように感じます。ボケっとしていたら中国という国のスピードに飲み込まれそうになるほど、日本とは全く違う性質を持った国。
ここでいろんなことを吸収しようとすればするほど、常に自分の価値観について問われている気がしました。
そしていままで自分がなんとなく自然に身につけてきた「価値観」なんていうものは無意味だったのだな、といまは感じます。そうです、ここで私は良くも悪くも今まで持っていた「価値観」を全てぶち壊されてしまったのです。
ニセモノって何? 〜再びニセモノマーケットに突入!
次は、このニセモノ市場を盛り立てる人が集まる場所に潜入です! ここは上海の繁華街にあるニセモノ専門の市場。ファッション、バッグ、時計、靴など全てニセモノです。普通に小売販売もしてくれますし、業者も買い付けに来たりします。
外国人の姿が多いように感じました。休憩スペースで一緒になった欧米人に聞いてみると、半年に1回のペースで仕入れに来ていると言います。母国に帰ってお店で販売しているそうです。「夏はビーチで露天も出しているんだけど、このニセモノTシャツは観光客にとても人気だよ!」と普通に話していました。もちろん、大きなキャリーケースを持って仕入れに来ている様子の日本人の姿も見受けられました。
「そんなの気にしない」という需要があるからこそ、ここにこんなにもたくさんの人が仕入れに来てしまっている。そして仕入れに来ている人たちもそれがニセモノであることを忘れているかのような、当たり前の感覚になっている。そんな雰囲気が漂っていました。
先進国が「衰退国」にならないように、いま考えたいこと
ここまでは「消費者側の責任」として、耳にする話かもしれません。私は、ニセモノが横行する真の原因は、生産者側にも潜んでいると思います。
現在、世界の工場として知られている中国から、東南アジアなど第三国へ生産拠点を移す企業が相次いでいます。これは中国の工場にとって本当に深刻な問題になっています。私自身、仕事が取れず廃業を余儀なくされた工場も見てきましたし、なんとか経営は続けているものの、生産ラインの空きが目立っているなどの話もよく聞きます。ニセモノ商品は、この生産ラインの空きを埋めるために利用されています。長年、諸外国から鍛えられた縫製ノウハウを生かし、見本さえあればなんでも作れます。ただ「需要があるから作る」というだけでなく、「生き残るために作らなければいけない」という側面もあるのかもしれないと思うのです。
モノゴトは、どの側面から見るかで正解が全然違って見えると思います。ここで紹介したような事例は、ビジネスチャンスとして興味深いものに映る人もいるかもしれません……でも、はたしてそんな世の中になって良いのだろうか? と疑問です。例えば、空いている生産ラインでエシカルな商品を作っていけたらと考えると……そんな世の中のほうが、キラキラしていると感じます。
そして、いま中国で起きているこの状況は、今後東南アジアの国々やアフリカ諸国でも起こり得る可能性があります。先進国と呼ばれる私たちは、より良い暮らしを求め、ビジネスチャンスを求めて、発展させていこうとしていく過程で、価値を強要していないのだろうか? と感じます。私は、私たちの現在が正しかったと思えません。だからこそ、同じ未来をたどらないような発展がされることを願います。そして私たちは衰退国にならぬよう、先進国というにふさわしい進化をし続けなければならないと思います。
行き着いたのは「人類滅びろ理論」?!
最後に、この連載を通していろんなことを考えて、私がついに行き着いたのは「人類滅びろ理論」です。ものすごい極論ですよね。ある人から「気温が5度、10度変わろうが、地球にとっては痛くもかゆくもない。地球は、氷河期だって乗り越えてるんだから」と聞いて、「『SAVE THE EARTH』なんて人間のエゴだったのか!!! だったらいっそのこと『孫死ぬぞ!』みたいなキャッチフレーズのほうが、みんなもっと焦るんじゃないか? なんて考えてしまったのです。
でもその人は加えて、「人間は近い将来滅びる運命かもしれないけど、だからこそ人間として、その間どう生きていくかを考えるべきなんじゃないかな」と教えてくれました。Fragmentsでよく出てくる「選択肢」という言葉。人間が滅びる前提で「だったら私はこれを選ぼう! こんな楽しいことしよう!」と選択していくことを、一人が1回でも増やしていけば大きな力になると思います。気がつけば人間の未来も変わっているかもしれません!
私はまもなく出産を控えています。これから私にとって未知の子育てをしていく中で、自分の考え方がどんなふうに変化していくのか、いまからとても楽しみです。そして今後も私なりのエシカルファッションの実現に向けて奮闘していきます! 連載を通して読んでくださったみなさまに感謝します。また近いうちにお会いできることを楽しみにしています。
〈おわり〉
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