イギリス・ロンドンにオフィスを構え、ケニアを拠点にフェアトレードでアクセサリーの生産を行う「MADE(メイド)」。Made in Kenyaのアクセサリーブランドの経営を通して、貧窮化したコミュニティを活性化させることを目指しています。そのオフィスで、ディレクターのNeal Gershinson氏、マーケティング・PR担当のLizzie Woolnough氏、デザイン担当のFrances Carverley氏にお話を伺いました。
―― どういった人たちが「MADE」の商品を購入しているのでしょうか?
Lizzie:ふだんはTopshopやオンラインマーケットのASOSで買い物をするような、10〜20代の女性が多いわね。その中でも、人とはちょっと違うものを好む女性です。「MADE」のお客さまは女性がほとんどですが、ユニセックスのバッグを製作して男性のお客様にも手に取ってもらえるようトライしているところよ。
Neal:「MADE」のお客さまは、雑誌に掲載されていたり有名人が所持しているのを見たりして買いに走るタイプではなく、個を大切にするタイプが多いんじゃないかな。
―― 「MADE」を運営するうえで重視していることはなんでしょうか?
Neal:大きく分けて3つある。まず、①美しい製品を作ること、②手に取りやすい価格を実現すること、そして③エシカルであること。単なる「製造過程」ではなく、「『MADE』が何をしているか」、「ケニアでどのように製作しているか」をきちんと伝えることを大切にしているよ。「MADE」の製品は、すべてアフリカ・ケニアでのハンドメイド。同じデザインが施されたアイテムでさえ、一つずつ違う顔を持つんだ。それに対してファストファッションは大量生産。機械で作られて、まったく同じ見た目になる。個々が独特であることが、「MADE」の特徴なんだ。それを伝えるためにも、まずは製品を気に入ってもらうことが何より大切なんだ。
Lizzie:そうすれば、その製品が持つ背景にも関心を持ってもらいやすくなるものね。だからこそ「ファッションブランドである」という基盤を大切にしているの。こうした美しい製品が作れるのは、ハンドメイドだからこそ。リサイクル素材もまた、ケニアらしいエッセンスを加えてくれる。デザインの魅力とそれを支えるエシカルの魅力、どちらをどれだけ伝えていくかのバランスを取るのは難しい。そこで、ソーシャルメディアを活用しながら、消費者とコミュニケーションを取ることが重要だと思うわ。
Neal:一般的なファッションブランドは、多くの広告費を掛ける傾向にある。有名人を起用するなどしているけれど、それらの費用は結局、消費者が支払うことになるんだよね。「MADE」は、Facebookなどのソーシャルメディアをしっかり活用しているから、広告費が掛からない。その分、金額を商品価格に上乗せしなくて済むんだ。
――大手ブランド・企業とコラボレーションアイテムを多数発表しているところも印象的ですが、どのようにしてコラボレーションに至ったのでしょうか?
Neal:どちらから強いアプローチがあったというわけではなく、双方の思いが合致したというのが大きいんだ。例えば、「LOUIS VUITTON」や「TOMMY HILFIGER」は、もともとアフリカでの生産に関心を持っていて、それらに関連するプロジェクトに参画した経験も持っていた。
自分たちと同じ思いを持った人やブランドといっしょにプロジェクトに取り組み、高品質かつ手に取りやすい価格で商品を提供できるようにすることは、どちらも非常に興味深く感じているポイントだからね。
―― 2005年に設立し、あと2年でブランド設立10周年を迎えますね。今後、どのように「MADE」を展開させていきたいと思いますか?
Lizzie:今は自社のオンラインショップが販売の拠点なので、いつか実店舗も持ちたいわね。ただロンドンは賃料が高いので、それ自体が「広告」となり得るけれど、それだけリスクも大きいから慎重に考えているところよ。
Neal:ブランドの規模を拡大させたい。アフリカには、100%ピュアウールの素敵なニットもあるから、今後はニットのスキルと素材を活用して、スカーフやハットといった、新たなカテゴリーの製品も生み出したいと思っている。
「MADE」で新たに雇えるのがたった1人だとしても、その人には両親や兄弟、姉妹、もしくは夫や妻、子どもを持っているかもしれない。1人を雇うことの影響は、本人だけではなく家族にまで及ぶもの。スキルを持ちながらもそれを売り出すマーケットがないという課題に、今後はエリアを拡大して取り組んでいきたいと思うよ。